フランクリンの空とぶ本やさん(ジェン・キャンベル)
二人の時間がいかに豊かなものであるか フランクリンの空とぶ本やさん
ジェン・キャンベル(文)ケイティ・ハーネット(絵) 今年は大変な災害と、大きな事故が発生する年明けとなりました。被災された皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
現地のニュースが続く中、地域の方々の安全が確保された後などに、絵本を送ったら役立ててもらえるかしら?と思って調べたところ、「被災地に本を送らないで」という記事を見つけました。 現地の本屋さんの営業回復の妨げになる面と、本の管理は意外と大変なのとで、却って被災地の負担となるケースがあるからだそうです。 なるほど、確かにありうると思いました。だったら、現地で困っている絵本屋さんに届くようにする…といいのかな? 今回ご紹介する作品の主役はドラゴン。名前はフランクリン。 タイトルは、彼の大きな背中に本棚を乗せて、町まで飛んでいって出張本屋さんをすることを示しています。 干支にちなんでご紹介しようと昨年のうちに選んでおいた作品ですが、被災された絵本屋さんがもしおられたとして、こんな風にしてフランクリンとともに空を飛んでいって、その絵本屋さんの営業再開のお手伝いができたならと、思わずにはいられませんでした。 そんなわけで、つい前置きが長くなってしまいましたが。 本が大好きなドラゴンのフランクリンと、本に加え、ドラゴンが大好きという、ちょっぴり男勝りな少女のルナ。 ふたりが出会って親交を深め、一緒に本屋さんをやってみるまでが描かれています。このほかに2作品、シリーズで発行されています。 友達がほしいフランクリン。本好きと言うだけあって、彼には知恵がありました。 最初に川で出会った釣り人には、友達に接するような態度で「本が好き」とまっすぐに自己紹介しますが、怖がられて一瞬で逃げられます。友達作り失敗です。 次に農場で出会った女性には、丁寧に「音楽とバレエが好きです」と自己紹介。つまり、距離感を改善した上で、自分の関心の中から女性が好みそうなものを選んだわけです。 でも残念、今度も失敗に終わります。 そんな中、森でルナに出会います。森の中にいる子ども。彼は「星空を眺めるのとボール遊びが好きだよ」と伝えます。 でも本が好きなルナは、ちょうどドラゴンが活躍する本を読んでいたのです。彼女は「まさか本当に会えるなんて!」と大喜び。 私は、その後二人が親交を深めてゆく場面にある、次の一文がとっても好きです。 「二人とも、自分たちは物語でできているのかも、と思いながら、次から次へとおしゃべりします」
二人の時間が、いかに豊かなものであるか。星空の元で語り合う二人のシルエットのイラストが静かに添えられています。
幸運に恵まれた出会いや巡り合わせは、必ずしも期待できるものではありません。 でも、情熱を傾けられる何かが自分の中にあって、知恵と工夫でトライし続けた先には、その可能性が、きっと待っていてくれそうな気がしてきませんか? フランクリンの物語から、またひとつ、人生の希望を受け取って。私もトライし続ける気持ちを大切に、新しい1年を過ごせたらいいなと思います。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 フランクリンの空とぶ本やさん
ジェン・キャンベル(文) ケイティ・ハーネット(絵) 横山和江(訳) BL出版 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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