わたしのろば ベンジャミン(ハンス・リマー)
![]() |
|
![]() わたしのろば ベンジャミン
ハンス・リマー みなさんは、写真でできた絵本を ご覧になったことはありますか?
色々なコンセプトのものが出版されておりまして、 そのうち今回ご紹介する作品は、 ストーリーに対応した挿絵が絵ではなく、 全部写真でできているものになります。 フィクションのような、ノンフィクションのような、 どちらとも受け取れるのが魅力の一つかもしれません。 地中海のとある島で暮らしている、 スザンヌという小さな女の子と、ろばのベンジャミン。 表紙のふたりは、こんなにくっついて写っているけれど、 もちろんぬいぐるみではありません。本物のろばです。 スザンヌがパパと散歩していて偶然見つけたのは、 まだ赤ちゃんのろばでした。 家に連れて帰って、ほんのり甘いミルクをあげて、 それから、名前をつけてあげることになりました。 スザンヌが、ベンジャミンと名付けます。 ふたりの距離がぐっと近づく、とびっきり愛らしい場面です。 ベンジャミンとのエピソードがいくつか続きますが、 どの場面も、ベンジャミンは本当におりこうさん。 ふたりのかわいい日常に、ほのぼのしちゃいます。 しかし後半に、ドラマが待っていました。 朝、目覚めたら、ベンジャミンがいなくなっていたのです。 外に出ると、ちょうど去っていくベンジャミンの姿が! スザンヌはベンジャミンを追いかけていって、 「わたしもいっしょに いっていい?」と尋ねます。 ベンジャミンの返事はというと… 頷きながら、大きな鳴き声を3つ。 「イイヨー、イイヨー、イイヨー」 鳴き声の和訳が、まさかの「イイヨー」(!) 確かに、「いいよ」という言葉は、 ろばの鳴き声らしい響きを伴っていますよね。 ここのくだり、原文は一体どんな表現だったのかと 気になってしかたないんですけど(笑) 翻訳した松岡享子さんの言葉を選ぶセンスとユーモア、 素敵すぎます。大好きです。 ベンジャミンについて行って思いのまま楽しんだ後、 帰り道がわからなくなったスザンヌは泣いてしまいます。 「おねがい、ベン。わたしをおうちへ つれてかえって」 ベンの返事はもちろん、「イイヨー、イイヨー、イイヨー」。 無事おうちに帰ることができました。 絵を描くのも大変な作業ですが、 子供と動物をモチーフにして、 ストーリーに必要な写真撮影をすること、 逆に、偶然撮れた写真を物語に生かしたり、 文章のほうで辻褄を合わせる状況もあったかもしれませんが、 写真だけで一冊の絵本を作る作業というのも、 そりゃあ大変だったろうなあーと思います。 我が家では猫を1匹飼っておりますゆえ、 ペットと過ごす愛おしい時間に共感を覚える一方、 地中海の島ならではの海辺の村の風景と、 モノクロ写真の懐かしい雰囲気にふれているうちに、 旅に出かけたい気分も、ふつふつ湧いてきちゃいます。 GWはずーっと仕事してたので、 夏、どこか遊びに行けたらいいなあと思います。 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
OtherBook