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Letters from Father Chrismas by J. R. R. Tolkien

なんだか自分が受け取った手紙のよう

Letters from Father Chrismas
by J. R. R. Tolkien
小学生の時、夢中になって『指輪物語』を読みました。黒の乗り手に追いかけられる旅が怖くて仕方なかったけど、文庫版の文字がとても小さくて読みづらかったけど、止められなかったのを覚えています。

この本は、『指輪物語』のJ.R.R Tolkien が、自分の子どもたちに、サンタクロースとして送った手紙をまとめたものです。最初の手紙は、当時3才だった長男のJohnに宛てたもの。

4人の子どもたちが、順に生まれて大きくなってしまうまで、1920年から1943年と、なんと23年にわたって続けられました。

2020年に100年の記念として出版されたのが、この版です。

『指輪物語』とは趣が異なり、子どもたちを喜ばせるためのユーモラスなお話です。封筒には、手書きの凝った切手とスタンプ、手紙には、サンタクロースの震えた文字(1923年時点で、1927才)の文章と、楽しいイラストが添えられています。

サンタクロースは、プレゼントの準備を手伝ってくれるNorth Poler Bearと暮らしていますが、このクマは、気はいいものの、怠け者で、食いしん坊。毎回とんでもない事件を起こします。

ある時、サンタクロースの帽子が強風に飛ばされ、North Pole(柱になっています)のてっぺんに引っかかってしまいました。

North Poler Bearは、帽子を取るために、North Poleによじ登り、柱は折れてサンタクロースの家の屋根に倒れかかり、家は壊れてしまいます。お手上げのサンタクロースと、帽子を持ってひっくり返っているPoler Bearのイラストが楽しい。

ペンとカラフルな絵の具で細かく描かれていて、トールキンは絵心もあったんですね!クマがちょっと細いけど、表情豊かです。
North Poler Bearは、その後も階段からプレゼントを抱えたまま落っこちたり、Rory Bory Aylis の花火を一度に爆発させて、えらいことになったり、お風呂に入ったまま寝込んでしまって、水漏れで階下のプレゼントをダメにしてしまったりと、ドタバタを繰り広げます。

イギリス人は、こういうのが好きなのでしょうか。パディントンやピーター・ラビットが家をめちゃくちゃにする映画を思い出して、おかしくなりました。

手紙には、North Poler Bear (NPB)も登場して、言い訳をしますが、綴りはめちゃくちゃ。のちに、サンタクロースの秘書として、エルフのIlberethも加わります。手紙の中で、3人が別々の筆跡で言い合っていて、おかしなことになっています。

時には、Goblinが攻めてくる戦いがあって、長文の手紙が届いたりと、北極は、のんびりしたばかりの暮らしでもありません。サンタクロースと、仲間達の暮らしが、より深みを持って想像されます。

1939年からは、現実の世界でも戦争になり、子どもたちからの手紙も減り、疎開したり、家族を亡くしたりで、プレゼントの届け先が分からなくなったことを、サンタクロースが嘆いています。

北極は平和なものの、プレゼントの材料が入手しづらくなり、倉庫の中身が減ってしまいました。プレゼントのリクエストに応えづらくなったのも悲しいことです。

しかし、ペンギンがはるばる北極にやってきて、Poler Bearと踊る楽しい出来事もありました。

最後のページは、星いっぱいの宇宙に、北極と南極にポールが立った地球が浮かんでいるイラストのクリスマスカードです。デフォルメされた月や、土星、火星もあります。ありえない風景ですが、微細に描き込まれ、美しくて心が和みます。

なんだか自分が受け取った手紙のように感じられるのも不思議です。手紙は日に焼けて汚れていますが、こうして写真になって製本されたことで、永遠になったようです。

楽しいエピソードがたくさんあって紹介しきれません。細かく設定された童話が大好きな人にオススメです。
Letters from Father Chrismas
by J. R. R. Tolkien
Publisher: HaperCollins
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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