どうぶつたちのナンセンス絵本(マリー・ホール・エッツ)
秀逸なセンスがあればこその着眼点 どうぶつたちのナンセンス絵本
マリー・ホール・エッツ(作・絵)/こみや ゆう(訳) つい先日、天王寺動物園へ行く機会がありました。
動物たちだけでなく、楽し気な幼稚園児のグループも、みんな、なんとかわいらしいこと!ワンコインで存分に和ませて頂きました。 そんなわけで今回の絵本は、1952年、ちょうど今から70年前の作品です。 愛らしい見返しを開いたところには「動物園へ行くすべての子どもたちへ愛を込めて。もちろん、行けない子どもたちにも。M.E.」とあります。 ナンセンスとは「意味がないこと、ばかばかしいこと、つまらないこと」とありますが、ナンセンスは、絵本の世界を魅力的なものにしている大きな要素の一つです。 作中にはさまざまな野生生物が登場します。絵は全てモノクロの線画で、それらには、自由に綴ったような詩が添えられています。 例えば、ヌーの風貌を皆さんご存じでしょうか。ヌーの詩はこんな感じ。 あぁ、ヌー! あぁ、ヌー!
なにも いわなくって いい. 見たら すぐに わかるよ. 飼育員さんを よんであげるね. ブラシを もって すぐに きてって! タテガミやヒゲがボッサボサに生えた、ヌーの絵が添えられています。
ここで「なんじゃこりゃ」「意味がわからん」なんてイラついたり、「それが何?」とツッコミを入れるのは望ましくありません。 ナンセンスに対して、そうした反応をすることこそナンセンス! ここは「いいねー、その調子!」と拍手して喜ぶのがお約束であり、嗜みというもの(笑) ところが、こうしたどうでもいいことや、突飛でばかばかしい展開が続いて、すっかり愉快になってきた頃、ふいに現れるのです。既視感のある光景が。 檻の中の動物に「こんにちは.ごきげんいかが?」と挨拶するおじさん。 彼は「ぼくみたいな つまらない人間が、おりの中の動物たちにしてやれることといったら、これくらいしかありませんから」と語ります。 その行為に意味があるか?と聞かれたら、ほとんどないかもしれないし、ばかばかしくも見えます。だけど、おじさんの気持ちは何だかわかる気もする。 共感を伴ったナンセンスな状況はシニカルで、つい、ページをめくる手が止まる。 秀逸なセンスがあればこその着眼点に、もはやナンセンスちゃうやん…!と、うなってしまいます。 エッツなど、野生生物を愛する絵本作家が伝えたかった思いを、幼少期に受け止めた人々が飼育員を志した結果でもあるのでしょうか。熱心に積み重ねられた研究と工夫により、動物園は進化し続けています。 ちなみに天王寺動物園は「ふれんどしっぷガーデン」という施設がオープンしたばかりでした。そして数年前から長期にわたるリニューアル計画が進んでいるのだとか。今後も楽しみですね! どうぶつたちのナンセンス絵本
マリー・ホール・エッツ(作・絵)/こみや ゆう(訳) アノニマ・スタジオ 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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