ぽんぽん山の月(あまんきみこ)
ぽんぽん山の月
あまんきみこ まだまだ日中は暑さが続いているものの、 セミの鳴き声はいつの間にか消えて、 コオロギの鳴き声を耳にするようになってきましたね。
さて、今月ご紹介する作品は、 「ぽんぽん山の月」という絵本です。 作者はあまんきみこさん。 あまんきみこさんといえば、 今も載っているのかどうかわからないんですが、 私が子供の頃には教科書に載っていた 「ちいちゃんのかげおくり」の作者です。 太平洋戦争を扱った、とっても切ないお話だったけれど、 かげおくりを実際に試してみて本当にできたときは、 おおーって思ったりもしました。 子うさぎたちが、母の帰りを待っています。 日が暮れて大きな月がのぼってきたのに、 母うさぎはちっとも帰ってきません。 その様子を近くから見ていた はずかしがりやのやまんばがいました。 彼女は母うさぎが戻らない理由を知っていました。 人と接するのが怖くて、やっとの思いでお団子を買った帰り道、 一羽のうさぎが猟師に撃たれるのを目撃してしまったのです。 彼女はお団子の包みをそっと残して、その場を去りました。 心優しいやまんばの行いを見ていた秋風の子は、 子うさぎたちが嬉しそうにお団子を食べる様子を 風に乗せてやまんばに伝えてあげました。 それら全てを見ていた十五夜の大きな満月が 穏やかな月明りでみんなを優しく照らします。 ここでは物語を端折ってお伝えしていますので、 ぜひ、実際に絵本をご覧いただいて あまんきみこさんによるふくよかな文章で この物語をじっくり味わっていただきたいなと思います。 優しい黄色と穏やかな青を印象的に使いながら、 伸びやかなタッチで描かれた渡辺洋二さんのイラストが この物語を一層温かい空気で包み込んでいます。 誰かが誰かを慮って、 誰とも知らせずに、そっと手を差し伸べる。 それをまた別の誰かがちゃんと見ていて…。 密やかに行われる、清らかな親切の連鎖。 本来は切ない設定であるにも関わらず、 読み終わると温かくて満たされた気持ちになるのです。 今年の中秋の名月は、9月15日だそうですね。 晴れるといいなあと思います。 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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