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Tales from the Inner City by Shaun Tan

いつもと違う視点で眺める世界

Tales from the Inner City
by Shaun Tan
「ショーン・タンの世界展」が2019年の5月から今年の1月末まで日本各地を巡回しました。京都では、2019年秋に開催され、運良くコロナ蔓延前にゆっくり見ることができました。

“Tales from the Inner City” は、2018年に出版され、2020年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞しました。日本では、岸本佐知子さん訳で『内なる町から来た話』として出版されています。

ショーン・タンは、画家としての才能も素晴らしく、この絵本の原画はすべて油彩で100x150cmと大きなものです。展覧会でこの表紙の絵に魅了されました。絵の力ってパワフルですね。

この本は、『遠い町から来た話』の姉妹編で、絵本というより絵付きの短編小説集です。分厚く話も難しいため、『遠い町から来た話』は日本語版を買ってしまったのですが、今回は原書にトライしてみました。

“Tales from the Inner City”には、都市を舞台にして、25の動物と人の関わりの物語がおさめられています。

ショーン・タンは、子どもの頃からSFやファンタジーを愛し、出版には至りませんでしたが、高校生の時からSFの短編小説を書いていました。村上春樹の短編も好きで、影響を受けているとインタビューで話しています。

私は実はストーリーがはっきりしている長編小説が好きで、謎めいたまま終わってしまう短編小説は苦手。でも、美しいイラストのために読み進むことができました。

25のストーリーは、詩のようなものもあれば、短編小説のようなものもあり、長さも内容もバラエティに富んでいます。

登場する動物たちは、名前があったり、喋ったりはしません。犬や猫のように人間の友達として描かれているものもあれば、クマが弁護士をたてて人間を訴えるお話もあります。

地球は46億年前に生まれ、生物は38億年前ごろに発生したと考えられています。地球の環境はその長い歴史の中で大きく変化し、生命は絶滅と進化を繰り返してきました。

現代の人々は、あまりにも人間中心になりすぎて、自分も動物であり、自然の一部であることを忘れてしまっているかのようです。

人々が物質的・精神的な問題に苦しんでいるのは、自然からあまりにかけ離れた生活をしているためではないかとショーン・タンは考えます。彼は、自身のウェブサイトで多くの事を語っていますので、興味のある方は是非のぞいてみてください。

さて、私の好きなのは、肺魚のお話です。肺魚は見た事がありませんが、オーストラリアの水族館にはいるようです。肺を持っていて、顔がちょっと人みたいな珍しい魚です。

ハリケーンが過ぎ去った後に、排水溝や溝などのあちこちに肺魚が打ち上げられていて、人々は家に持ち帰って、バスタブなどに入れて世話をします。すると、肺魚はどんどん人間のすることを学び、水から出て生活するようになり、しまいに人間より何でも上手にこなすようになります。人々は、自分の生活に手いっぱいで、肺魚のアドバイスに耳を傾けようとしません。

興味をそそられるお話ではないでしょうか。これは、比較的ストーリーがはっきりしていますが、もっと詩的であったり、抽象的なお話が多く、単純には理解できず、余韻が残ります。

犬の話も、素敵でせつなく心に残ります。このお話だけで別の小さなサイズの絵本にもなっています。よく分からないところもあり、何度もページを開いてしまいます。
他にも気になるお話がいっぱいで、書ききれません。読むと、いつもと違った視点で世界を眺められるかもしれません。イラストだけでも価値のある、心を揺さぶられる絵本です。
Tales from the Inner City
by Shaun Tan
Publisher: Walker Studio
profile
八津谷 郁子
洋書絵本キュレーター

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/

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