ゆかいな かえる(ジュリエット・ケペシュ)
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![]() 生き生きと、愉しそうなカエルたち ゆかいな かえる
ジュリエット・ケペシュ(作) いしい ももこ(訳) ここ数ヶ月の間に、いくつかの絵本屋の店主さんと、来てもらったり、出かけて行ったり。お互いのお店を行き来する機会がありました。
今回ご紹介する絵本は、私のお店でも以前から扱っているんですが、その、いくつかの絵本屋さんに伺った際にも、それぞれ目につく棚で、ちんまりと“お留守番”していた作品です。 好みやセレクトが似ているとはいえ、おしなべて目にすることになろうとは(笑)季節柄のせいかな? この作品、カエルの兄弟が4匹、のらりくらり、冬眠するまでの毎日をとびきりご機嫌に楽しむという、ただそれだけのお話です。 彼らは、卵の時から、のらりくらり。 カエルの卵塊が魚に見つかって、大半の卵が魚のごはんになってしまうという(!) 衝撃のシーンから始まるんですが、読んだ印象としての衝撃は、ほぼゼロです。なぜなら伝え方が、めちゃんこユルユルだから。 たまたま4粒の卵が難を逃れ、水中を漂っていきます。 彼らは無事オタマジャクシとなり、足がはえてカエルへと成長を遂げます。今度はサギやカメといった捕食者が襲ってくるんですが、やっぱり、のらりくらり。 カタツムリのかくしっこ(?)なる謎の遊びをしたり、夏の夜には、夜行性の動物たちと一緒に心地よさげに歌って楽しみます。 どのページも、ずっーと、ユルユルしてる。 いえ、ページだけでなく見返しも。にこやかなオタマジャクシが全面を埋め尽くしてるんです。みんなご機嫌でかわいい(でもちょっと、うじゃうじゃしてるけど)。 しかしです。この作品、本当はちっともゆるくないんです。 やさしい言葉が並ぶ心地よさといい、何度も読みたくなるリズムとテンポのよさといい。青・緑・黒のインクを使った3色刷りによる表現といい。 3色刷りの配色って難しいんですよ。インクの重なった部分がどんな色になって、どこに使ったら効果が得られるか?とか、白(紙の色)の利かせ方とか。このあたり、めちゃんこセンスが問われるのです。そうしたことが、抜群にうまい!結構ガチのデザインワークが施されているんです。 そのためでしょうか。50年あまり前に出版されてから、私の手元にある本は、2019年時点で第103刷。これって、単純に考えても半年に一度のペースで増刷し続けているんですよ。鬼ヤバくないですか?? …すみません、つい言ってみたくなっちゃった。解説後ということで、お許しを(笑) オリンピックも、あっという間に閉会ですね。 生き生きと、愉しそうなカエルたち。 私にとっては「こんな風に、気の合う店主さんたちや作家さんたちと共に生きてゆけたら最高!!」っていう、鬼ヤバい(まだ言うか)憧れを、抱かせてくれる作品です。 ゆかいな かえる
ジュリエット・ケペシュ(作) いしい ももこ(訳) 福音館書店 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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