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The Invisible by Tom Percival

We all belong here

The Invisible
by Tom Percival
今回ご紹介する絵本のタイトルは、”Invisible” 目に見えないという意味です。

女の子が透明人間になるファンタジーではなく、ちょっと意外なストーリーです。


主人公のイザベルは、経済的に貧しい家の女の子です。

寒くてもヒーターを入れることはできません。皆のように、家族で映画に行ったり、お買い物に出かけたりもできません。

イザベルは家族の愛に恵まれていたので、あまりそういう事を考えないようにしていました。

しかし、家賃が払えなくなり、楽しい思い出のある家を出て、郊外の寂しい集合住宅に引っ越すことになってしまいました。

その殺風景で寒々しい環境に、イザベルは楽しい事を見出せなくなります。

裕福な家族がピカピカの車で走り去ります。イザベルのことはまったく目に入らないようです。

着飾った人々がすれ違います。誰もイザベルのことを目にもとめません。

気が付くと、イザベルの手も足もだんだん透き通り始め、まったく透明になってしまいました。

もう誰もイザベルのことが見えません。

しかし、そうなってみると...イザベルは他にもいっぱい透明な人々がいることに気づきます。

空き缶に花を植えているおばあさん、公園で鳥に餌をあげているホームレスのおじさん、自転車を修理している難民の男の子。みんな、とっても寂しそう...

イザベルは皆を手伝うことにしました!

イザベルを見た人々は、手伝いに加わり始めます。より多くの人々が助け合うにつれ、皆はだんだん透明ではなくなってきます。
Soon, Isabel wasn’t just visible - she was vibrant…
and so was her new home!
イザベルは、見えるようになるだけではなく、元気いっぱいになりました。

イザベルは、とても特別で難しいことを成し遂げたのです。


心に強く訴えかける内容であったので、あらすじを全部書いてしまったのですが、興味のある方は、イラストとともにぜひ読んでみてください。

現在が舞台の絵本で、こんな可愛らしいイラストで、主人公が貧しいという設定はめったにないのではないでしょうか。

お金が十分に無いために自分を取るに足らないように感じてしまったり、透明人間になったような気分になったりすること、私にも経験があって共感しました。


Tom Percivalは、まだ40代半ばの陽気でおもしろいイギリス人男性です。彼にとって、この絵本は思い入れのあるものです。

子どものころトレーラーハウスで6年暮らしたことがあります。テレビも水道もなく、周囲と比べると、やっぱり不公平だと思ってしまうこともありました。

彼は家族の愛に恵まれ、移動図書館で好きなだけ本を読むことができましたが、世の中には、もっと困難な状態にある子どもたちもいます。

貧困状態にある子どもたち、貧困以外の問題でのけ者と感じさせられている人々に向け、”We all belong here.” というメッセージを伝えたい、という思いが込められています。

絵本にするのが難しそうなテーマなのに、軽快にページをめくらせるのが素晴らしい才能です。
The Invisible
by Tom Percival
Publisher: Simon & Schuster
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

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StoryPlace
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