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かぜ(イブ・スパング・オルセン)

「好き」か「嫌い」かでくるくる変わる

かぜ
イブ・スパング・オルセン(作)
先月は、何というか、ぼんやり、もっさり、季節の変わり目が感じられないお天気が続きましたね。

お天気にしまりがないと、心の中までもわもわーっと、どことなく重かったような気がしませんでしたか?

スッキリ吹き飛ばしてほしい!という気持ちが高まったせいでしょうか、手にとったのが今回ご紹介する絵本です。どのページも、風が吹きまくってます。

風は、ごくごく身近な自然現象。しかしその表情は様々で、気まぐれで、つかみどころがありません。

この作品は、子供達の「風ってなあに?」という素朴な問いかけに、作者の豊かな想像力と表現力で答えたものかな、と思うわけですが、ここに用意された答えは愉快なもので、大人の心も軽くクリアにしてくれます。
「ねえ、おじさん、おばさん、風はすき?」
そもそも大人の私たちは、日々を送る中で、風についてそこまで意識していません。

しかしこの作品では、本の半ばあたりまでずっと、風が「好き」か「嫌い」かで文章が展開していきます。「好き」は、風がもたらす有益な作用を伝え、「嫌い」は警戒をにおわせます。

「いじわるな風」と言う人がいる一方で、「しんせつな風」と言う人がいる。

向かい風も追い風も、その人の都合で呼び方が変わるだけ。当たり前のことだけれど、意識しだすと案外興味深い。「好き」か「嫌い」かで、風の印象がくるくる変わる。

「やっかいな」「うれしい」「にくらしい」「つめたい」「たのしい」

風は人々のいろんな感情を乗せて、どこへともなく去ってゆきます。とりとめのないやりとりは勢いをつけて、いつの間にか空想の世界へ。

暑い南の国に暮らす人々は、一日中、団扇で扇いでなくちゃいけなくて、そうしてできるのが南風だよ、なんていう空想も、無邪気で楽しい。

余談ですが、こないだワークショップのため伺ったお店でかわいい団扇が売られていて、陳列ケースに大きく「ひだりうちわ」と書いてある(商品名?)。それを見た参加者の女の子に「ひだりうちわって何?」と問われて、まごつきました。

お母さんと目があったけれど、お互い説明に困った挙句、「うふふふ」っていう意味深な笑みしか出なかったっていう(笑)

そりゃもう、忙しなく右手で扇ぐばかりの日々でして。どこともそうですよねえ?

ああ、絵本作家さんのような、気の利いた想像力と表現力が、私にもあればなあ。

この記事が公開になる頃には、スカッと夏らしい気候になっていればいいのですが。

皆さま、どうぞ楽しい夏休みを!
かぜ
イブ・スパング・オルセン(作)
ひだにれいこ(訳)
亜紀書房
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/



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