わたしとあそんで(マリー・ホール・エッツ)
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![]() わたしとあそんで
マリー・ホール・エッツ (著, イラスト), よだ じゅんいち (翻訳) 私が改めて絵本に興味を持ったのは、25歳の時だったと思います。
たった数分。短い文章と画面いっぱいの絵に触れただけなのに、心の力みのようなものがすーっと緩んで、不思議なほど軽やかな気持ちになれました。 「こんな簡単なことで、こんなに軽やかな気持ちになるなら、もっと読んでみよう!」 これが、絵本との接点が復活したきっかけだったと思います。日々の閉塞感による「心の凝り」を解消するために、興味を持ったのでした。 そんな経験を持った者として、このコラムを担当する機会を頂きました。 今回ご紹介するのは、マリー・ホール・エッツの中でも、個人的に大好きな作品です。 優しいクリーム色の本の中央で、幼い女の子がじっと正面を見つめている、愛らしい表紙。だけど気になって仕方ないのは、そのタイトル。 女の子の頭上に「わたしとあそんで」と大きく書かれているのです。(「ちいさい○○ちゃん」とかじゃなくて) 幼い女の子が、にっこりするでもなく「わたしとあそんで」と言っている…。およそ絵本らしくない、意味ありげな雰囲気。 本の扉を開くとまた現れる、この女の子は、3才くらいでしょうか。表紙から感じる印象よりもさらに幼くて、とにかく身近な生き物に興味津々。ふれあいたい気持ちで頭の中がいっぱい。 そう、女の子は、身近な生き物たちと遊びたかったのです。 だけど女の子がまっすぐに行動すればするほど、生き物たちは嫌がって隠れてしまい、やがて女の子は途方に暮れてしまいます。 しかしここからが、絵本作家エッツのすごいところ。 この後ちゃーんと、女の子の願いは叶うのです。とてもほのぼのとした時間の中で。 描かれているのは、変わらない場面の、ごく限られた時間の出来事。 まるで、通りすがりの公園で偶然その顛末を見届けているうちに、すっかり微笑ましい気持ちになっちゃった!そんなのに似た、爽やかな幸福感を得ることができます。 また、女の子の健気さも印象的。 前半は、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、後ろを向いたりと、女の子の願望がそのまま行動で描かれているんですが、20ページ目以降、ガラリと流れが変わります。 女の子の心の動きと周囲の反応が、穏やかな時間の流れとともに見事に描かれているのです。 自分と他者との関わり方についても、改めて考えさせられますよ。 個人的には、ずーっと背後で見守っている、にょろにょろしたおひさまの存在も気になるところ。今で言う、ヘタウマ的なゆるさがたまらんのです。 どうしてこんな風ににょろにょろさせちゃったんでしょう…。謎です。 と、何度もおいしい作品なのです。一度ご賞味あれ。 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |