レモンの図書室(ジョー・コットリル)
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![]() 人は一人では生きていけない レモンの図書室
ジョー・コットリル(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、ジョー・コットリルさんの『レモンの図書室』。 この物語の主人公はカリプソという名前の女の子。5歳のときに母親を病気で亡くしている。それが数年前のことだというのだから、いまは8歳から10歳くらいなのだろう。
もともと本が好きだったカリプソはママが亡くなってからは、ますます一人で本を読むことに没頭している。学校の休み時間だってそう。クラスメートと遊んだりしない。 ママが亡くなってからパパはいつもカリプソに言う。「心を強く持て。自分のいちばんの友だちは自分だ」と。そして言うのだ。お前は強いから、パパに何かあっても大丈夫だと。 では自分がいなくなっても大丈夫なのかとパパに問い返すと、大丈夫という返事が返ってきた。それで良いはずなのに、カリプソは少し傷つく。だけどパパはそのことに気がつかない。 学校に転校生がやってきた。黒いロングヘアーに青い目がキラキラしている女の子だ。転校生のメイにいきなり「遊ぼう」と声をかけられてカリプソはとまどう。 メイが教えてくれた。カリプソとは音楽の種類の名前なのだと。そしてメイはカリプソと同じくらい本が好きで、カリプソがまだ読んだことがない本を教えてくれる。 メイと友だちになったりしたら、「他人は必要ない」と言っているパパを裏切ることになるのだろうか? (ジョー・コットリル『レモンの図書室』冒頭を私なりにまとめました。) 最初は、少女二人の友情物語のように思えましたが、徐々に、もっと大きな問題を含んだ物語なのだとわかってきます。
まだ10歳くらいの我が子に、友だちなんかいらない、自分自身がしっかりすれば良いと教え込む父親。 実は父親はカリプソ以上に妻を失ったことに傷つき、立ち直れずにいるのです。 あまりにも喪失感が強すぎて、次に同じことが起こったら耐えられる自信がないのでしょう。 だから自分の周囲に壁をめぐらせて、誰一人入れないようにする。何も(誰も)持っていなければ、失うこともないというわけです。 カリプソは本さえあれば、どんな場所にも飛んでいけ、楽しいことを経験できるのだから、パパの言うことは正しいと思い込んでいました。 が、メイと出会ってそうではないと気がついていくのです。 人には人が必要なんだ。ずっと人をさけつづければ、傷つかないなんて、ありえない。そんなことしたら、傷ついた上に、さらに一人ぼっちになってしまう。 (ジョー・コットリル『レモンの図書室』P240より引用)
そして、カリプソは気がつきます。パパの言葉とこころが一緒のものではないのかもしれないと。
人は、まったくちがう感情をかくすために、心にもないことをいったり、やったりする。(ジョー・コットリル『レモンの図書室』P282より引用)
この物語は、少女が心の傷を回復させ、成長していく物語です。
その助けをするのが友人になったメイ。 彼女のお母さんが日本人だということが話の途中でわかり、なんだかぐっと物語を身近に感じました。 私はこの物語の中で、本好きなカリプソとメイが、自分たちの本を作ろうとするシーンが一番好きです。完成したら、ぜひ読んでみたいと思うくらい。 余談ですが、私はカリプソというジャンルの音楽がピンときませんでした。 調べてみると、一番有名であろうのは『バナナ・ボート』なんですって。 なるほど、あれがカリプソかと、納得しました。 レモンの図書室
ジョー・コットリル, 杉田 七重 小学館 カリプソは、本が大好き。いつもひとりでいるカリプソにとって、本はたったひとつの心のよりどころだった。「わたしはだいじょうぶ」何があっても、カリプソは、自分に言い聞かせる。そんなカリプソの心を開いたのは? 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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