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The Sleeper and the Spindle by Neil Gaiman

お姫様を救うのは王女様。王子様不在のおとぎ話

The Sleeper and the Spindle
by Neil Gaiman Illustrated by Chris Riddell
作家で脚本家でもある多才なNeil GaimanとイラストレーターのChris Riddellによる童話絵本です。

イギリスの絵本で年間を通じて最も素晴らしい絵本に送られる Kate Greenaway Medal の受賞作品で、Chris Riddellは唯一の三度目の受賞者。

表紙は半透明のカバーに茨が描かれ、奥に美しい眠れる森の美女が透けて見えます。

“The Sleeper and the Spindle” というタイトルからも想像できますが、「眠れる森の美女」の新しいお話です。

なんと白雪姫が主人公で、眠れる森の美女を救いに向かいます。王子様不在のおとぎ話です。

2つの王国、KanselaireとDorimar は鳥も飛び越えられない高く険しい山脈に隔てられ、国境は接していますが、行き来する人はいませんでした。

ただdwarf達だけは地下のトンネルから通り抜けることができました。三人のdwarfは、王女の結婚の贈り物にDorimarの有名なシルクを買い求めに出かけました。

結婚式は一週間後。しかし、王女はあまり乗り気ではないようです。
It seemed both unlikely and extremely final. She wondered how she would feel to be a married woman. It would be the end of her life, she decided, if life was a time of choices.
王女の部屋にはウエディングドレスもありますが、武具も。そしてシーツには、skull motifが。

この絵本にはあちこちにskull motifが登場します。白雪姫の継母の犠牲になった人々のskullと関係があるのでしょうか。

さて、国境を越えて地上に出た3人は、いつも立ち寄る宿屋に向かいますが、様子が違うことに気づきます。

Dorimarの王女が魔女の呪いで眠りにつき、お城の中の他の人々もまた眠ってしまい、茨に覆われて誰も近寄ることができなくなったのが7~ 80年前の事。

最近その眠りが疫病のように急速に広がり、お城から遠く離れたこの村にまで近づいているというのです。

様子を確認したdwarfたちが戻ってくると、村人たちはすでに眠りに落ちていました。

dwarfたちの報告を受けた王女は、自分の王国にも危険が迫っていることを知り、国境近くの人々を避難させ、結婚式を延期して呪いを解きに向かいます。

dwarfは魔法に耐性があり、白雪姫は一度毒リンゴで一年眠りについていたために、これも免疫があるとか。

途中眠っている人々がゾンビのように襲ってきたり、眠っているはずの盗賊に足を掴まれたりしますが、危機を乗り越えてお姫様の眠る塔に辿りつきます。

この先の展開がとても意外です。イラストに躍動感があって、ドラマティックで素晴らしい。

ラストも素敵。王国を危機から救った王女は、帰路につくかと思いきや、逆の方向に進みだします。
There are choices, she thought, when she had sat long enough. There are always choices.

She made one. ….

They walked to the east, all four of them, away from the sunset and the lands they knew, and into the night.
もはや童話でも、結婚がゴールでないどころか、冒険に出かけるのも、お姫様を救うのも、王女様だったりするのですね。

お姫様同士のキスシーンは色っぽくすらありますが、子どもの本に送られるKate Greenaway Medalを受賞しています。文化と時代の流れの違いを感じました。

翻訳版はありませんが、漫画のようなイラストで話の流れが分かりやすく、初心者の方にもおすすめです。
The Sleeper and the Spindle
by Neil Gaiman Illustrated by Chris Riddell
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
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