笑われたくない!(手嶋ひろ美)
全てを決めるのは自分の心 笑われたくない!
手嶋ひろ美(作) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、手嶋ひろ美(作) 大庭賢哉(絵)『笑われたくない!』。 結花は小学四年生。脳性まひのため、生まれた時から手足が不自由だ。
手足を思った通りに動かせないから、車椅子も漕げない。何をするにも人の5倍はかかる。 結花の通う学校では、毎年二学期のおわりにクラスでお楽しみ会をする。班ごとの出し物は話し合いで決める。結花の班では、二人羽織をすることになった。 同じ班の翔太と信吾が、そして小雪と結花がそれぞれ組む。二人羽織の前を担当すれば、思うように手が動かなくても大丈夫。結花は仲良しの小雪と一生懸命練習して、上手になるつもりだった。 それなのに翔太と信吾は、わざと下手にやったほうが良いという。笑われてこその二人羽織じゃないか、と。でも結花は人に笑われるなんて嫌だった。 さて、お楽しみ会までに結花たちの班は二人羽織をマスターできるのか。そして結花はわざと下手にしてみんなに笑われることを選ぶのか、それとも上手に演じることを選ぶのか? この本は小学中級以上を対象に書かれた本ですが、おとなが読んでも考えさせられることが多いです。
もっとも考えさせられたのはハンディキャップについて。 結花は「健康な人は、体が不自由な人でも努力して練習すれば、同じようにできると思っているふしがある」と感じます。 でも、何度も何度も練習して、それでもできるようにならないのが、「体が不自由」ということだと書かれていて、ハッとさせられました。 また、賑わう商店街を車椅子で移動している時に、自転車や人とぶつかりかけ、明らかに迷惑そうにされるシーンも、現実の世界でも起こっているであろうと思われました。 ただ、この物語は、「体が不自由な人には親切にしなくてはいけません」ということをテーマにしているわけではありません。そこがポイントだなと思います。 結花はあるクラスメートに、笑われたくないという気持ちがどこから来ているのかを指摘されます。 そして自分らしくあることを自分で選びとれば、人に笑われても、どう思われても関係ないということも教えてもらうのです。 私も結花と同じように、子どものころから人に笑われるのが嫌いです。もちろん狙って笑わせる場合は別ですが。 だからまるで自分のことを言われたように思いましたよ。なるほど、私ってそうだったのか、と。 作者の手嶋ひろ美さんご自身、脳性まひで手足が不自由なため、子どものころから できないことが多く、「笑われたくない」と思っていたそうです。 でもあるとき「生まれつき不自由な体は変えられないけれど、生き方は自分で選んで変えていける」と気が付いたんですって。そして徐々に笑われても平気になっていったそう。 全てを決めるのは自分の心。 この物語の中で結花にそのことを教えてくれるクラスメートは本当にカッコイイです。小学四年生の男子に生き方を教わりましたワ。 笑われたくない!
手嶋ひろ美(作) 大庭賢哉(絵) 文研出版 手足が不自由な結花は、お楽しみ会の出し物で小雪と二人羽織をすることに。練習して上手になるつもりだったのに、同じ班の翔太と信吾から、観客を笑わせるためにわざとへんな食べ方をしろと言われてしまう。だけど、みんなに笑われたくない!そんなのいや!結花は翔太たちにないしょで、小雪とひみつの練習にはげむのだが…。 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』 |
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