おとな女子ヨーロッパひとり旅(寺田和代)
「ないない尽くし」な人でもヨーロッパ旅行を楽しめるコツ Soliste(ソリスト)
おとな女子ヨーロッパひとり旅 寺田 和代 (著) 私はいまドイツへ向かう飛行機の中でこの書評を書いています。
ベルリン・プラハ11日間の旅、といっても研究のための調査旅行です。 今年3月、友人の赤ちゃんに会うため、ドイツ・フランクフルトを訪れてから、半年足らずでのヨーロッパ再訪となりました。どうしてこんな書き出しになるかといえば、今月のおすすめの一冊とおおいに関係があるからです。 著者の寺田さんは『クロワッサン』(雑誌)などで活躍されているライター兼エディターですが、30代半ばから20年間に30回近くヨーロッパひとり旅を楽しんでこられました。でも海外旅行を始めたころは「若さ、経験、語学力、お金、ないない尽くし」からのスタートだったといいます。 本書は、そんな「ないない尽くし」な人でもヨーロッパ旅行を楽しめるようなコツを紹介しています。計画の立て方から予約の仕方、服装などが、実際の旅の記録や素敵な写真とともに綴られていて、ひとり旅も意外と難しいことではないのだなと思わせてくれます。 例えば、 航空券やホテルの予約は、いまはインターネットで簡単にできます。自分で航空会社のホームページでチケットを取った方がお得な割引があったり、条件のいい席が取りやすかったりもします。このように自分だけの旅を設計する方が安上がりだという例も本書には示されています。 私も今回の旅は、インターネットで飛行機、宿、鉄道の予約をしました。そのとき使った宿泊施設を予約できるサイトは寺田さんのおすすめでもあったので、ずいぶん心強かったです。 とはいえ、仕事や家庭や介護が肩にかかる人が旅を実現するには、予算だけでなく、自分や周囲の人に無理のない日程を考えなければなりません。そこで、寺田さんは半年前から旅行の計画を立てることを勧めます。半年あれば周囲との調整もはかることができるからです。 私も若い頃はお金を貯めては、ヨーロッパに語学研修や、研究のための調査に行っていたのですが、結婚して子どもができてからはピタリと途絶えていました。間が空けば空くほど、行きたい気持ちよりも、億劫さや恐怖感の方が増すものです。インターネットのおかげで、研究に必要な外国文献や資料も、家に居ながらにして手に入ります。そうして、家事育児と仕事を理由に、遠出をしなくなっていたのです。 でも、若い頃に一緒に学んだ仲間や先生から、いまは手続きも簡単にできるし、費用もかからなくなってるし、あとは気持ちだけだよ、まずはパパッと遊びに行っちゃえば、と励まされて、心が動きました。そして、半年前、思い切って出てみたらまったくその通りでした。自分の気持ちを固めることが一番の関門だったのだとわかったのです。 寺田さんが言うように、旅は「手持ちの日常だけでは煮詰まってしまいそうな気分をゆるめ、それだけが自分のすべてじゃない」と思わせてくれます。私もヨーロッパの地を歩きながら、少しばかり遠のいていた別の自分の世界を取り戻せるように思えてきたのです。 そんなわけで、熱が冷めないうちに再訪と相成りました。とはいえ、おしゃれなおとな女子ひとり旅ではなく、小学4年の子ども連れで研究のための調査旅行ですが。この旅がまた日常を潤し、活力を与えてくれることと思います。 Soliste(ソリスト)
おとな女子ヨーロッパひとり旅 寺田 和代 (著) KADOKAWA/メディアファクトリー (2015) 年齢を重ねた今だから出会える風景がある!ひとり旅歴20年、ヨーロッパの街々を28回旅した著者が提案する、おしゃれでリーズナブル、安全な旅の楽しみ方。 出典:amazon 橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師 同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。 BLOG:http://chekosan.exblog.jp/ Facebook:nobuko.hashimoto.566 ⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら |
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