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よるとひる(マーガレット・ワイズ・ブラウン)

よるとひる
作: マーガレット・ワイズ・ブラウン
また春がめぐってきました。 今回で12冊目のご紹介となります。

これまで、トラがスッポンポンになるとか、 冴えないおっさんが恋に落ちる話とか、 女性におすすめ?ん?という風に思わなくもないような、 そんな作品もいくつか登場したわけなんですが、 1年目の締めくくりとして、今回は、 スマートな大人の恋をイメージするような作品を。

夜が好きな黒い猫と、昼が好きな白い猫のお話です。 (表紙は白じゃなくて、黄色くなっちゃってますけれど)。 黒い猫は男の子。白い猫は女の子。

表紙はシンプルで、きり絵か影絵みたいな印象なんですが、 中のイラストは、コンテと筆やペンでしょうか、 手描きのタッチがよくいかされている、 古い絵本によくある、黒をベースにした2色刷りのもの。
”しろいねこは、日だまりに まるくなっているのが、すきでした。 ひるのぬくもりと、ひるのざわめきが、すきでした。 くろいねこは、よるのしじまを あるくのが、すきでした。 ホタルのひそやかな またたきが、すきでした。”
2匹の猫たちは最初、すれ違った生活をしていたんですが、 黒い猫が、ふいに一人でいるのがつまらなくなって、 白い猫を誘ってみることにしました。

が、白い猫はつれなくて、今日(昼間)私と一緒に過ごすなら、 今晩あなたに付き合ってもいいわよ、みたいな態度。 黒い猫はそれを受けて、まずは白い猫に付き合うことにしました。

2匹で昼間のせかいをみているうち、だんだんと日が暮れて、 いよいよ白い猫が、黒い猫に付き合う番。

白い猫は、怖いと感じて拒否していた夜のせかいが、 そんなの思い過ごしで、怖いおばけなんていないし、 恐ろしいと思っていた物音が、本当は、 ねずみの鳴き声だったことを黒い猫から教わります。

人間に遠慮なんかしなくても存分に食べられる、 おいしい夕食のありかも教わりました。

心細さを感じて緊張していた白い猫は、 紳士的に自分をエスコートする黒い猫のおかげで、 彼がいれば大丈夫、楽しい!と思うようになっていました。

人でいえば、素敵な映画を観て、 語らいながらイルミネーションが美しい街を歩き、 最後にとっておきのディナーをごちそうになるようなもの。 とってもスマートな、恋のはじまり。
”「よるは、お気にめしましたか?」 「ええ、とてもね」 「よるには、せかいは、すべて ぼくたちのものだよ」&rdquo
極めつけの、このセリフ。 まさかこれが子供の本だなんて(はしたない)! そう思われたなら、心配ご無用。

実はこの作品、幼い子供にとっては、 「猫がどうして夜活動するようになったのか、に着想を得た物語」 と、受け止められるような構成になっています。

心が成長してから読むと、まるで暗号みたいに、 違った解釈が生じるように工夫されているんです。 (今回は、その暗号部分だけを抽出してご紹介してみました。)

よる(黒)とひる(白)。おとなとこども。 表の物語と、その裏にある物語。 様々な2面性を盛り込んで成り立っているのも、面白いなって思います。

1年間読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。 2年目も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/



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