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■関西ウーマンインタビュー(農業編)


間 晴苗さん(晴苗農園)

自然と向き合うことは、自分と向き合うこと

間 晴苗さん
晴苗農園
年間130種類ほどの野菜とハーブを育て、採れた野菜を会員やお店に配達したり、野菜市を開いたりして、農業で生計を立てる「晴苗農園」の間晴苗さん。

「野菜それぞれの個性を大切にして、生命力を存分に発揮できる環境を」という想いのもと、草木や虫、微生物、土、水、太陽、風、雨など自然と一体になって農業に取り組んでいます。間さんが育てる生命力あふれる野菜は、食べる前から元気を与えてくれます。

就農して10年。当初は「女性一人で農業ができるのか、食べていけるのかがまったく見えていませんでした」と振り返る間さん。そもそも、間さんが「農業」を仕事に選んだ理由とは? 不安をどう乗り越え、今があるのでしょうか。
「農業」という仕事の多面性を知って
大学卒業後すぐ、就農をめざして研修をスタートされたそうですが、いつから「農業」に関心があったのですか?
子どもの頃からの体験や想いが、今につながっているように思います。

「家族で遊びに行く」と言ったら山に木イチゴや山菜を採りに行くような家庭で育ち、自然の中にいることが好きでした。近所に住む祖父は家庭菜園をしていて、いちごやイチジクなど好きなものがちょこちょこっと植わっている小さな畑がかわいらしく、「私も老後はこんなふうに家庭菜園をするのかな」と想像していました。

両親が自然食志向で、「食べたもので体はできている」と、家では手づくりのものや添加物の入っていないものを食べていたので、外食の味、特に化学調味料の味が苦手で、「どうして外で食べるものはおいしくないんだろう」と思っていました。

また、管理教育になじめなくて、毎日学校に行くというみんなが普通にしていることができず、小学生の時から「学校が無理な自分には会社勤めも無理だろうな」と、手に職をつけたいと漠然と思ってきました。

中高生になっても学校をよく休んでいて、読書の影響もあったと思いますが、「人間ってお金や欲のために戦争もするし環境破壊もするし、なんて愚かな生き物なんだろう。それに比べて、野生の生き物たちの生き方は美しい」と、人間として立派になるよりも動物らしく生きたいと思っていたんです。
そういった想いが原点にあるんですね。
最初は「農業」という仕事ではなく、「農的な暮らし」への関心が芽生えました。

大学生になって一人暮らしを始めると、付き合いなどで外食が増え、気がついたらコンビニで買ったものを普通に食べていました。昔は食べられなかったものを違和感なく食べていることに危機感を覚えたんです。

味覚とは本来、食べ物が自分の体に必要か、安全かを判断するための感覚だと思ったので、昔はちゃんとあった生きるために大切な感覚を失っていることに、動物としてこれではいけないと思いました。

また、昔食べられなかったものには、体に本来必要のないものが入っていて、「食べ物=命」よりも経済が優先されているからだとも思い、両親が食べさせてくれていたものがどんなによいものだったのかを改めて知るきっかけにもなりました。

ちゃんとした食事をしたいと食材を選ぶようになりましたが、そうすると食費が高額になってしまいます。両親がさせてくれたような食生活を、自分が自分自身や家族のためにできるだろうかと考えた時、自分が食べるものはできるだけ自分でつくれるように家庭菜園をしたほうがよいのかなと考え始めました。

でも、この時はまだ、街の暮らしへの憧れを捨て切れず、若いうちは都会に住んで、物欲がなくなったら田舎暮らしもいいなという程度でした。

それが、今度はクローゼットの整理をしていて、昨年買った服を全然着ていないことに気がつき、要らないものに囲まれて暮らしていることを気持ち悪く感じたんです。

「足るを知る」という感覚が芽生え、永く使えて自分が大切にできるものだけを持って暮らしていきたいと思うようになりました。このことが消費社会から農的な暮らしに自分の意識が変わった分水嶺だったように思います。
仕事として「農業」を意識したのは、何がきっかけだったのですか?
大学で「持続可能な社会」をテーマにした研修旅行に行くことになり、南ドイツの小さな村の農家を訪問しました。

その村に向かう途中の車窓から見えた「山と森が広がり、小さな集落がポツンポツンと点在する」という風景がとても美しく、自然と人間の営みはこのくらいのバランスがちょうどいいのかもしれないと感じました。

訪問先の農家の方が「この風景や自然は、自分たち農家がここで農業をずっと続けてきたから守られてきたものなんだよ」と教えてくれました。

それまで農業は「食べ物をつくる仕事」と思っていたのですが、生態系や風景を守ったり、地域の文化を受け継いだりできることを知り、仕事としての魅力を感じたんです。

まもなく就職活動の時期になり、「働くとは」について考えた時、私は「食いぶちを稼ぐこと」と「社会や地域の中で何か役割を担うこと」だと思いました。

食いぶちを稼ぐなら食べるものをつくったほうが手っ取り早いんじゃないか、また自然と調和した農業をすることで、地域の自然や文化を受け継いだり、食べてくれる人が元気になったりといった役割を担えるんじゃないかと思ったので、農業を仕事にしたいと思い立ったんです。
「1人でできる範囲のことから」を心がけて
農業を仕事にするために、何から始めましたか?
両親の友人に有機農業をされている方がいて、研修生を受け入れていらっしゃったので、研修させていただくことにしました。

研修は師匠の仕事時間中であれば、いつ行ってもいつ帰ってもよく、一緒に仕事をする中で、自分自身で学び取るというものでした。私は平日朝8時から夕方5時まで通いました。

師匠の考えで、春夏秋冬と一通りの季節を体験した後は、土地ごとに土質や気候などがあるので、実践しながら学んだり、近所の人に教わったりしながら、農業に取り組むほうが早いということで、1年後の就農をめざしていました。

でも、果たして女性一人で農業ができるのか、食べていけるのかがまったく見えていませんでした。

それが、研修を受ける中で、師匠が1人で小さな面積の畑に自分の食べたいものをつくり、採れたてのお野菜を会員さんに自分で配達して生計を立てているのを目の当たりにして、私もこの方法でならできるかもしれないと前向きな気持ちになれたんです。

師匠の畑がある能勢町は、地元の隣町でありながら、景色がまったく違い、山と田んぼのある昔ながらの里山の風景がきれいな町です。通ううちにこの町で就農したいと思うようになり、土地と家を探し、1年後に就農しました。
どのように農業で仕事をつくってこられたのですか?
家族や友人、知人に手伝ってもらうこともありましたが、基本的に「1人でできる範囲のことから」を心がけてきたので、約500坪ほどの土地を、年月をかけて耕しながら、お野菜を植える面積をちょっとずつ増やしてきたという感じです。

畑づくりで悩んだ時は、同じ町内にいる師匠に聞きに行くこともできますし、まわりの農家の方々にもアドバイスしていただくこともあります。

お野菜の配達先は知り合いにお願いするところから始めました。

そこから、野菜市を3カ所で開かせてもらったり、カフェなどにフライヤーを置かせてもらったり、さらにはお野菜を配達させていただくことになった箕面市にあるカフェで週1回、野菜市も開かせてもらうなど、広がっていきました。

1年目は介護の夜勤アルバイトをしていましたが、日中の畑仕事との両立が体力的に限界になり、2年目からは農業だけで生計を立てようとアルバイトを辞めました。配達先も収入も少なかったので生活は苦しかったのですが、配達先をちょっとずつ増やすことができ、3年目からは農業収入だけで生活できています。
「お野菜の生命力」に助けられる
これまでにどんな「壁」または「悩み」を経験されましたか?
体力的なことが1番の課題でした。

小さな畑ですが、常に10~20種類を収穫できるように時期をずらしながら作付けするので、1年を通して手間がかかります。また、生産から配達までをすべて1人で行っていて、週2日の配達日には畑作業がまったく進まないので、休みがなかなか取れず、体調を崩したこともあります。

もともとスポーツなどをしてこなかったので、体力がありません。研修中から毎日ストレッチや筋トレをするようになり、仕事をする中でも筋力がちょっとずつついてきましたが、体力以上の仕事が常にあるという感じでした。

最初の数年はやりたいことができているという充実感で無理をしていることに気がつかず、「今日中にここまで進めたい」と無理を重ねて不調になるということを繰り返していたんです。

そんな時、母からヨーガ療法という健康法を教えてもらい、毎日の体操に取り入れるようになってから、体の調子がよくなってきました。自分の「いい状態」というのがわかったので、無理して体を壊す手前で「このあたりでやめておこう」と判断できるようになるなど体調を整えるのが上手になったように思います。

自分のことを大事にしなければ、仕事を続けていけません。睡眠をしっかり取る、体を動かす、体にいいものを食べて食べ過ぎない、無理をしないことが大事だなと身に染みて思います。

そういった肉体労働の大変さはありながらも、体を動かして働く喜びがあるということも、農業を始めてから知りました。「体は動かすようにできている」「体で思考する」という感覚があります。

また、生き物相手なので「大変でしょう」と言っていただくことがありますが、生き物相手だからこそ、お野菜の生命力に助けられることも多いんです。
「お野菜の生命力に助けられる」とは?
豪雨や台風によって作付けが遅れたり植えたばかりの苗がダメージを受けたり、芽が出たばかりの葉ものが虫に食べつくされたり、鹿や猪にかじられたりということもあります。その時はがっかりするものの、不思議とメンタルにはそれほど影響していません。

お野菜という生き物の生き様を目の当たりにするからでしょうか。

たとえば、能勢の冬はとても寒いんです。私は寒いから分厚い洋服を着こんで仕事をしますし、終わればすぐに家に帰って温まりますが、お野菜は夜の間もずっと畑で寒さに耐えて、朝なんて土も葉っぱもカチカチ、しゃりしゃりに凍っているのに、太陽の光に当たると、再びぴーんと美しい姿を見せてくれます。

また、お野菜は水分を減らして糖分を増やすことで、寒さから身を守っています。生きるために工夫しながら、寒さに耐えている姿を見ると、感謝と尊敬と愛おしさが募るんです。
間さんのそのまなざし、とても素敵です。
自然と向き合うことは、自分と向き合うことでもあるなと感じています。

同じニンジンでもいろんな品種があり、品種によって性格が違います。「この子は乾燥に強い、この子は乾燥に弱い」「この子は成長が早い、この子は成長が遅い」などあって、「どれがいい、どれが悪い」ではありません。

その時々の気候に応じて「乾燥に強い子」が生き延びたり、成長が早い子は台風でダメージを受けてしまっても遅い子がいたおかげで全滅せずに済んだりして、命をつないでいます。それぞれに、それぞれの役割があるんだなと気がつきました。

また、お野菜だけではなく、畑にはいろんな生き物がいます。いろんな生き物がいるからいいんです。

虫が発生した時、小さな苗を守りたいと虫を取っていたのですが、作業が追いつかずにいたところ、カエルが虫を食べてくれていることに気がつきました。

自然の循環です。そういうふうに、いろんな生き物がいることによって、うまいことまわっていっているんだなと思いました。

目に見えるもの以外にも、土の中にはものすごい数の虫や微生物がたくさん生きていますし、太陽や雨、風といった大きな影響も受けています。

その中にいると、すごく小さな自分も感じられます。自分の内側に目を向けると、自分のお腹の中にも土の中と同じようにたくさんの微生物が生きていたり、細胞の成り立ちもまるで宇宙みたいだから、すごく大きな自分も感じられます。

自然の中にいると、自分の変なところやダメだなと思っていたところも、認めてもらえる感じがするんです。自分を過大評価しなくても、過小評価しなくてもいい、このままのサイズの自分でいいんだと思えて、自分とも仲良くなれる気がします。
農や畑を身近に感じてもらえるように
お仕事をされる中で、いつも心にある「想い」は何ですか?
研修初日に師匠に言われた言葉があります。「私たちは商品をつくっているのではない、食べ物をつくっているんだよ」。「食べ物=命」なので、経済が優先されてはいけないという、自分がそれまでに感じてきた社会に対しておかしいなと思うことの答えになりました。

食べてくださる方には、農や畑をいつも身近に感じていただけるように、お野菜の命としての美しさを伝えていきたいと思っています。

おいしくて生命力を感じるお野菜をお届けすることはもちろん、実際に畑に通ってもらえたらいいなと一緒に大豆を育てるところから始める「みそ部」といった活動のほか、畑の近況やお野菜のおいしい食べ方などを載せた「べじたぶる・ふぁいん通信」を2カ月に1回ペースで書いてお渡ししています。

お届けしているお野菜がどんなところでどんなふうに育っているのかを知っていただくことで、ツヤツヤぷりぷりした元気なお野菜が自分の一部になる喜びを感じていただいたり、日々食べているお野菜から自分と自然がつながっていることを実感していただいたりして、元気になっていただけたらいいなと思っています。
近い未来、お仕事で実現したいことは何ですか?
畑を始めた時から取り組んでいることではありますが、お野菜から種を採取する自家採種を続けていくことです。

たくさんの種類を小さな畑で育てているので、自家採種できるのはほんの一部ですが、お野菜が命をつなぐための、大切なお手伝い。これからも続けていき、いろんな方と種の交流もしていきたいなと思っています。

そして、もう1つ。今、お野菜を食べてくれている子どもさんたちが大きくなった時、農業が仕事として魅力的だと思ってもらえるようになったらいいなという願いがあります。小さな農業で生計を立てていくことで、農業の間口を広げ、おもしろさを伝えていきたいですね。
profile
間 晴苗さん
2008年に大学卒業後、有機農家で研修を受ける。2009年3月に独立し、「晴苗農園」を開く。年間130種類ほどの野菜とハーブを育て、会員やお店に配達するほか、箕面市のカフェ「サルンポヮク」で野菜市を週1回開いている。黒豆を育てるところから始めて1年かけて味噌づくりをする部活動「みそ部」を主宰している。
晴苗農園
BLOG: https://harenae.exblog.jp/
(取材:2019年3月)
editor's note
間さんのお話を聞いているだけでも、目の前の風景から、野菜、野菜の生き様、虫の営み、動物たちの存在、足元に広がる世界、土、土の中、太陽、風、雨、空、水、空気、宇宙、人々、自分自身・・・など、さまざまなことが、改めて光り輝いて見えました。

とても豊かな世界です。間さんは就農から10年経っても変わらず、新鮮なまなざしを向けておられました。むしろ、年々、より豊かな世界を見ていらっしゃるのだと感じます。

いろんな生き物の存在を感じられる自然の中にいると、「すごく小さな自分、すごく大きな自分も感じられる」「自分を、過大評価しなくても、過小評価しなくてもいい」「そのままの自分でいいんだと思える」と間さん。

昨年は大規模な台風がありましたし、天候や動物によって野菜にダメージを受けることもあり、苗を植えたからと言って必ず育つわけでもないので、精神的なきつさもあるのではないかなあと思っていましたが、「自分を含めたこの豊かな世界が見えているから、そこは問題ではないんだなあ」「そういったことも含めて、すべてが必要だと感じられているのだなあ」と思いました。
小森 利絵
編集プロダクションや広告代理店などで、編集・ライティングの経験を積む。現在はフリーライターとして、人物インタビューをメインに活動。読者のココロに届く原稿作成、取材相手にとってもご自身を見つめ直す機会になるようなインタビューを心がけている。
HP: 『えんを描く』

■関西ウーマンインタビュー(農業編) 記事一覧

  • 「自然と向き合うことは自分と向き合うこと」女性一人農業をスタートして10年。農業の楽しさを伝えるはるなさん。



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