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アルケミスト(パウロ・コエーリョ)

悩める心を知った“誰か”からの贈り物

アルケミスト
パウロ・コエーリョ(著)
『“運命”を掴まれた顔になりましたね』

久しぶりに会った知人が言いました。

これまで運命について考えたこともなく、初めての言葉に驚きました。

彼女は「これからはベルトコンベアに乗っているかのように、流れに身を任せるといいですよ。心配しなくても次々といい機会に恵まれますから」と続け、半信半疑でしたが、それを機に考えるようになりました。

主人公の少年サンチャゴは“ピラミッドに宝物が隠されている”とのお告げを信じ、悩んだ末、羊飼いを辞めてアンダルシアから遥か彼方のエジプトを目指し旅に出ます。

(本文p.58)
「何かを本当に欲すれば、宇宙は常に、おまえの味方になってくれる」
羊飼いをしていた時に見知らぬ老人に言われた言葉です。

人の運命が何なのかさえ分からなかった少年が、一歩前に踏み出すきっかけになりました。

(本文p.40~より)
「おまえはなぜ、羊の世話をするのかね?」
「旅がしたいからです」

老人は、広場の一角にある自分の店のショーウィンドウの横に立っているパン屋を指した。「あの男も、子供の時は、旅をしたがっていた。しかし、まずパン屋の店を買い、お金をためることにした。そして年をとったら、アフリカに行って一ヶ月過ごすつもりだ。人は、自分の夢見ていることをいつでも実行できることに、あの男は気がついていないのだよ」…

老人は話し続けた。「結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ」
自分が本当に望んでいること。
社会の中でそれを見失う容易さ。
楽な道に流されそうになる弱い自分がいます。

羊飼いを辞めるのは、これまで慕ってきたかわいい子たちを捨てること。ぬくぬくとした現状から身を離すことです。そして冒険は命さえも危険にさらすかもしれない。

道中で出会った錬金術師が言います。

(本文p.181 198より)
「夢を追求してゆくと、おまえが今までに得たものをすべて失うかもしれないと、心は恐れているのだ」…

「もし、自分の運命を生きてさえいれば、知る必要のあるすべてのことを、人は知っている。しかし夢の実現を不可能にするものが、たった一つだけある。それは失敗するのではないかという恐れだ」
何が起こるか分からない不安。

内なる声に耳を澄ますと躊躇する自分がいました。

夢が実現する可能性があるからこそ人生はおもしろい。

「アルケミスト」との出会いは、悩める心を知った“誰か”からの贈り物に思えました。
アルケミスト
パウロ・コエーリョ(著)
山川紘矢+山川亜希子(訳)
KADOKAWA
羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は、錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。欧米をはじめ世界中でベストセラーとなった夢と勇気の物語。出典:amazon
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植木 美帆
チェリスト

兵庫県出身。チェリスト。大阪音楽大学音楽学部卒業。同大学教育助手を経てドイツ、ミュンヘンに留学。帰国後は演奏活動と共に、大阪音楽大学音楽院の講師として後進の指導にあたっている。「クラシックをより身近に!」との思いより、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んでいる。
Ave Maria
Favorite Cello Collection

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