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暴政 20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン(ティモシー・スナイダー)

いまこそ歴史に学び、日々の暮らしから待ったをかける

暴政
20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン
ティモシー・スナイダー(著)
ティモシー・スナイダー氏はアメリカ人の歴史学者です。中・東欧の現代史、とりわけホロコースト研究で新しい視点を打ち出し、世界的な評価を得ています。

その気鋭の歴史家が、強権的で自国優先を唱えるリーダーの政治に危機感を抱き、私たち一人ひとりがいまこそ歴史に学び暴政を食い止めなくてはならないと訴える本です。新書ほどのサイズの小さな本ですが、力強い一冊です。

スナイダー氏は、暴政へと突き進む指導者の政治手法とその方向性を確固としたものにしてしまうのは私たち国民の行動であると言い、1930~40年代のナチスドイツや戦後の社会主義諸国などの事例を引いて警鐘を鳴らします。

そして具体的に、どのような行動が「暴政」を許し助長させるのか、どうすればそれを防げるのかを20か条にして示しています。

その第一条は、「忖度による服従はするな」。

どんな支配者も、はじめのうちは、そうそうたやすく市民が自分たちの思うとおりになるとは思っていません。たとえば、ヒトラー政権もそうでした。

ところが、市民たちは命令されずとも、こう望まれているのだろうと忖度して、ユダヤ人を迫害していったのです。そのことが、より一層の迫害を促すことになりました。

熟慮もせずに新しい状況に本能的に適応することで、支配者が想定するよりも徹底した服従を自らに課すのは、さらなる暴政の下地となるのです。

暴政へと至らしめないために、私たちが日常生活で出来ることはあります。すぐにでも出来ることを紹介しましょう。

誰かを貶めるようなシンボル、差別を意味するシンボルから目をそらさないこと。それに慣れないこと。放置せずに自身の手で片づけることです。

自分の言葉を大切にすること。たとえ誰もが言っているようなことであっても、みんなと同じ言い回しを使わず、自分の語り口を考え出すこと。そのためには、努めてインターネットから離れ、読書をすることです。

自分でものごとを調べること。長い記事や論説を読むことにもっと時間を割くこと。紙媒体のメディアを定期購読することで調査するジャーナリズムを支えること。

「真実ってなんだろうね」などという質問をする人は、シニカルに構えて既成のものに囚われていないふりをしていますが、実は何のアクションも起こしたくないからであったりするのです。

アイコンタクトとちょっとした会話を怠らないこと。単に礼儀の話ではありません。周囲と接触を保ち、社会的なバリアを崩すことを意味します。

かつて抑圧を恐れて暮らしていた人々が恐怖を感じた瞬間として痛みを伴って思い出す共通した体験は、隣人たちの微笑みや挨拶の言葉が失われたことでした。これらは信頼と肯定の尺度なのです。

そして、プロとしての職業倫理を忘れないこと。危険な言葉に耳をそばだてること。想定外のことが起きても冷静を保つこと。

スナイダー氏は、とくに現在のアメリカやロシアの専制的な政治に対抗するための緊急提言として本書を出版しましたが、両国に限ったことではありません。

歴史は私たちに教訓を与えてくれます。それを特定の時代の特殊な現象であるとタカをくくらず、歴史から学び、日々の暮らしから、指導者の暴走に待ったをかけていかなくてはならないのです。
暴政
20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン
ティモシー・スナイダー(Timothy Snyder)(著)
池田年穂(訳)
慶應義塾大学出版会 (2017)
ファシストは日々の暮らしのささやかな“真実”を軽蔑し、新しい宗教のように響き渡る“スローガン”を愛し、歴史やジャーナリズムよりも、つくられた“神話”を好んだ。事実を放棄するのは、“自由”を放棄することと同じだ。ファシズム前夜―気鋭の歴史家ティモシー・スナイダーが、現在、世界に台頭する圧政の指導者に正しく抗うための二〇の方法をガイドする。 出典:amazon
profile
橋本 信子
流通科学大学 商学部 特任准教授

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を出て、2003年同志社大学にて嘱託講師、2011年から大阪商業大学、2015年4月から流通科学大学で初年次教育の専任教員として勤務。研究分野はロシア東欧地域研究
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
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