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「世界征服」は可能か?(岡田斗司夫)

そもそも「世界征服」ってなに?

「世界征服」は可能か?
岡田斗司夫(著)
アニメやヒーローものに登場する「悪の秘密結社」。彼らがもくろむのは世界征服。最後はヒーローによって倒されるのがお約束ですが、なぜ悪者たちは面倒くさい「世界征服」などたくらむのか。その高い科学力を使って、自分たちだけで楽しく豊かな生活を送ればよいではないか。そもそも「世界征服」ってなに? 世界を征服したあとはどうするの?

そんな素朴な疑問から始まる本書は、オタクの王、「オタキング」を自称する、プロデューサーで評論家の岡田斗司夫さんが書き下ろした新書です。

まず「世界征服」とは一体なにを目的にしているのでしょう。岡田さんは世界征服の目的を四つに分類しています。一つ目は「人類の絶滅」。自分たちが生存するための空間を得るためです。「宇宙戦艦ヤマト」のガミラス人がそうです。

二つ目は「お金が欲しい」から。「ヤッターマン」のドクロベエさまや、映画「007」シリーズの秘密組織スペクターがここに入ります。スペクターの幹部は「悪の売り上げ報告会議」を開いています。

三つ目は「支配されそうだから逆に支配する」。これはリアルですね。「機動戦士ガンダム」のジオン公国が代表例です。地球連邦に対して独立戦争をしかけるのですが、なんとなく不道徳なので「悪の帝国」の烙印を押されてしまいます。

四つ目は「悪を広める」ため。これはあまり例がないそうですが、「ドラゴンボール」のピッコロ大魔王が該当します。

実は目的が意味不明なものが結構多いようです。「北斗の拳」の聖帝サウザーは、子どもにピラミッドを作らせるという、よくわからない悪事を働きます。何のために作らせるのか、なぜ子どもたちなのか、ピラミッドが出来たら次に何をしたいのか、さっぱりわかりません。

実はこういう、何をしたいのかがわからないが、ただ悪そうなヤツが悪いことをしているからやっつけろという話も多いのだそうです。そして悪いヤツが考えることはみんなを苦しめること、つまり「世界支配」だとなるのです。

さて本題にもどって、実際に世界を征服するには、どんな手順を踏めばよいでしょう。まずは目的を定めます。世界征服それ自体は目的ではありません。征服して何がしたいのか、どんな世界にしたいのかを考えましょう。

目的が決まったら、次は人材確保です。賛同できる理念や理想を共有できなければ仲間は集まりません。勝算や報酬が見込めなければ人はついてきません。さらに優秀な人材を確保するにはコストがかかります。資金調達と設備投資も必要です。

これらが確保できたら、いよいよ小さな戦いを積み重ねていきます。しかし、部下の扱いは慎重にしなくてはいけません。軽々しく処罰したり消していったりすると人材確保が追い付かなくなります。

なんとか世界を征服したとしましょう。祝杯をあげたあとはどうしましょうか。その支配体制を維持するには自分一人ではやはり無理です。「支配」を分かち合え、しかも自分が一番でいられて、寝首をかかないような「支配階級」を維持するには、どれくらいの「支配権」を分け与えればよいでしょうか。彼らのなかで、跡目争いや勢力争いが起こらないようにしなくてはいけません。これって「世界征服」よりも難しそうです。

そもそも「世界征服」とはどのような状態なのでしょうか。「自分だけ豊か」な状態はあり得るでしょうか。現実の世襲の独裁国家は、支配者が何もかも独占しているようですが、そのような国からは、世界をリードするような独創的な文化や大きな富は生まれません。切磋琢磨して競争するからこそ、良いものや新しいものは生まれるのです。

一部の人だけが情報や、良いものへのアクセスを独占するよりも、みんなで豊かな世界を作ることのほうが、結果的に栄耀栄華を楽しめるのです。

このように本書は、マンガやアニメを知り尽くす岡田さんならではの情報量と着眼点でもって、さまざまな悪の組織を縦横無尽に分析し論じています。そして私たちの生きる時代を問い直す目を持つことの面白さを教えてくれる一冊なのです。
「世界征服」は可能か?
岡田斗司夫(著)
筑摩書房(ちくまプリマー新書)
アニメや漫画にひんぱんに登場する「世界征服」。だが、いったい「世界征服」とは何か。あなたが支配者になったらどのタイプになる?このさい徹底的に考えてみよう。出典:amazon
profile
橋本 信子
流通科学大学 商学部 特任准教授

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程を出て、2003年同志社大学にて嘱託講師、2011年から大阪商業大学、2015年4月から流通科学大学で初年次教育の専任教員として勤務。研究分野はロシア東欧地域研究
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら

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