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まわしよみ新聞をつくろう!(陸奥賢)

いつでも、どこでも、誰とでも

まわしよみ新聞をつくろう!
陸奥賢(著)
「まわしよみ新聞」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

みんなで新聞を持ち寄って回し読み、気に入った記事をおのおの3本ずつ切り抜いて、その記事をネタにして順々におしゃべりをします。そして、みんなの切り抜きを1枚の模造紙(または画用紙)に貼り付けて壁新聞をつくるという「新聞遊び」です。

考案者の陸奥賢さんは、観光家・コモンズデザイナーです。コモンズとは、コミュニティ(共同体)のような同質性の強い集まりではなく、「他者が集う場所」。コモンズに居合わせた人々が、特別な知識や能力もいらない共同作業を通して気軽に知り合い、だれのものでもない「共有財産」をつくりだす、そういう知的な遊びを、陸奥さんはいくつも考案されています。

いずれの遊びもオープンソース、つまり、いつでも、どこでも、誰でも許可なく、アレンジも課金もご自由にという立場で公開されています。そのなかで、もっとも多くの人びと、多様な場に広まっているのが、まわしよみ新聞です。

2012年春頃に生まれ、いまや全国の教育現場、職場の研修、地域の交流などで活用されています。年齢や属性、職業、性別などを問わず、本当に誰でも楽しめる活動なのです。

私がまわしよみ新聞を知ったのは、誕生からほどなくの頃でした。新聞の小さな記事を読んで興味をもち、2013年の夏休みに大阪で開催された「親子まわし読み新聞」に、当時小学6年生と1年生の息子らといっしょに参加しました。ちなみに小1(6歳)での参加は、そのときの最年少記録でした。

このときは、親子は私たち一組だけだったのですが、6歳、10代、20代、30代、40代、50代の参加者がそろっていました。面白いことに、6歳児と成人女性が同じ記事を選んだり、6年生が硬派な政治の記事を選んだりと、予想外の展開がありました。

順番にひと記事ずつ紹介していくので、6歳児にも発言の機会が平等にまわってきます。大人と同じように扱ってもらえて6歳児もご満悦。「今日はたくさんお友達ができた!」と満足して帰りました。

この「遊び」は、異年齢、異なる属性の人たちを無理なく自然に、上下なく、つないでくれます。むしろ多様な人たちが集って行う方が、より新鮮で、面白い発見があるのではないかと思います。

記事を探して、切り抜いて、おしゃべりして、貼り付けてと、目と口と耳と手と頭を使うからでしょう、男児らは、このとき話題に上ったニュースは何年か経ってからも覚えていました。

あまりに面白かったので、大学で教員仲間とやってみたところ、参加した先生方もたいそう楽しまれ、それぞれの授業でアレンジを加えて実施されました。私もアレンジして、毎年、授業に取り入れています。どこでやっても好評です。

その後、まわしよみ新聞は、あれよあれよという間に全国に広がりました。2017年にはその教育的効果を評価され、第66回読売教育賞NIE(Newspaper In Education「教育に新聞を」)部門最優秀賞を受賞しています。

さて、本書では、幼稚園、小・中学校、大学、職場、地域で行われている、特徴あるまわしよみ新聞の活動事例が紹介されています。幼稚園の事例は、指導のしかたによって、幼稚園児でもここまで発展的な学習ができるのかと衝撃を受けました。まわしよみ新聞、まだまだ発展の余地がありそうです。

基本形の「まわしよみ新聞」は、全国あちらこちらでしょっちゅう開催されています。定期的、継続的に行っている集まりもあれば、単発の試み、大規模なイベントなど様々です。

まずはどんなものか体験してみたい方は、まわしよみ新聞のHPやFacebookページ等で様子を探ってみられるとよいでしょう。全国各地の開催の告知や報告が見られます。

私も、全体の進行役をすることが続いていますが、また、つくる側にもまわりたい! とにかく楽しいですよ! おすすめです!
まわしよみ新聞をつくろう!
陸奥賢(著)
創元社
新聞記事を使っておしゃべりしながら、視野を広げられる!情報リテラシーも磨ける!全国で大人気のワークショップの具体的な実施方法や効果、国内外でのアレンジ例を、わかりやすく紹介!第66回読売教育賞受賞! 出典:楽天
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橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
Facebook:nobuko.hashimoto.566
⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら



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