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「憧れ」の思想(執行 草舟)

ただ楽しいだけの憧れなんてない。

「憧れ」の思想
執行 草舟(著)
この度、初めてラジオパーソナリティとして番組を持つことになりました。

これまでコンサートの告知などでゲスト出演したことはあるのですが、自身の名前が付いた番組を持つなど、初めてのことです。

新しい挑戦に胸を躍らせた、緊張の初収録。お相手のアナウンサーからこんな質問が飛び出しました。

「ピアノを習っているお子さんで、なかなか続かないってことがありますよね。それってどうすればいいと思いますか?」

その時、即座に頭に浮かんだのがこの一冊でした。

(序)
憧れには、人間の実存のすべてがある。人間とは、憧れのゆえに生き憧れのゆえに死する存在なのだ。憧れは、燃えさかる悲しみである。つまり、それは、我々人間が生きるための本源的躍動ということに他ならない。人間が生き、そして人間が死ぬ。それは憧れのもとに行われなければならない。憧れのない生命は、人間の生命ではない。
私にとって、まさに音楽が憧れです。
初めてピアノを教えてくれた先生、そしてドイツ留学時代の恩師。
先生という窓を通して音楽を見て、感じてきました。

振り返ると、いつも音楽に魅せられて、憧れの一心でこれまで生きてきたように思います。

(本文よりp.17)
ゲーテはその『ウィルヘルム・マイスターの修業時代』の中で、自己の憧れを作中人物であるミニヨンに託してこう歌っている。

ただ憧れを知る人のみが、わが悩みを知り給う

ゲーテは、生涯を思索に費やし、文学から自然科学に至るまで多くの業績を残した。そのゲーテが、自身の悩みを知る人は憧れを知っている人だけだと謳っているのだ。この言葉に出会ったとき、私の魂は憧れの本質に触れた実感を得て震撼した。憧れとは、悲しいものだと思ったのである。
“憧れ”の高揚感と、その影にある悲しみ。
時には、絶望の淵に追い立てられることもあります。

ただ楽しいだけの憧れなんてない。
音楽を通して学び、自分を知る過程で様々な壁にぶち当たる。
それでも、憧れが一筋の光となって暗闇を照らし導いてくれます。

私自身が音楽に憧れて生きていること。
コラムでも、そして新しいラジオの世界でもお話していけたらいいなと思います。
「憧れ」の思想
執行 草舟(著)
PHP研究所
ここには、星雲が舞っている。人間の希望が渦巻いているのだ。我々が生きる根源が直立しているのだろう。読み終わったとき、星が降って来るに違いない。出典:amazon
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植木 美帆
チェリスト

兵庫県出身。チェリスト。大阪音楽大学音楽学部卒業。同大学教育助手を経てドイツ、ミュンヘンに留学。帰国後は演奏活動と共に、大阪音楽大学音楽院の講師として後進の指導にあたっている。「クラシックをより身近に!」との思いより、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んでいる。
HP:http://www.mihoueki.com
BLOG:http://ameblo.jp/uekimiho/
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