映画と本の意外な関係!(町山智浩)
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![]() 映画に登場する本や意味深いセリフに込められた背景 映画と本の意外な関係!
町山智浩 (著) ある表現方法そのものが好きという場合と、あるジャンル、あるテーマに限ってだけ鑑賞するという場合があると思います。私の場合、映画は後者で、ごくごく限られた作品しか観てきませんでした。特に映画館での鑑賞は苦手でした。あの閉じ込められ感、大音量がつらかったのです。
それに、日々のさまざまなことに追われている時期には、なかなか劇場に足を運ぶ時間がとれません。小さい子どもを抱えるワーキングマザーが映画館に行くということに後ろめたさもありました。 3年ほど前に、これは研究の上でどうしてもと思う作品を観に映画館に行きました。すると、いまどきの映画館はずいぶん快適に造られているではありませんか。しかも、鑑賞中と鑑賞後の数時間は、その世界に没頭できます。これは一石二鳥、研究のネタ探しと気晴らしを兼ねられる!と味を占めて、ちょくちょく映画館に行くようになりました。 これはと思うものに出会えば人に紹介したくなります。授業やSNS、ブログなどで紹介すると、「ぜひ観たい」という反応だけでなく、「○○も面白かったですよ」「××も同じようなテーマでした」「今度△△観に行きます」と情報がどんどん集まってきます。教えてもらうと、その作品も観たくなります。そうして、劇場公開が終わっているものはディスクで観るようにもなりました。 映画を観れば、作品の作られた経緯や歴史的背景を知りたくなります。そこで、パンフレットや、映画を紹介している記事や本なども集めて読むようになりました。そのなかの一冊が、今月のおすすめ、映画評論家・町山智浩さんの『映画と本の意外な関係!』です。映画のなかに登場する本や、意味深いセリフを紹介する映画エッセイ集です。 タイトルのとおり映画作品に出てくる本や、その映画作品の背景にある文学作品の解説をしているもの、あるいは本にはあまり関係はないけれど映画の中の名セリフを解説しているものもあります。どちらかというとアメリカ映画中心です。町山さんの幅広い教養や知識が惜しげなく開陳されていきますが、親しみやすい文体ですので一気に読めます。 私が興味を覚えた作品をいくつかご紹介します。 「グランド・ブダペスト・ホテル」(2013) 劇場公開時、ミステリー・コメディの傑作と知り、観たいなと思いつつ逃していました。本作は「シュテファン・ツヴァイクの著作にインスパイアされた」そうです。ツヴァイクは第二次世界大戦前にウィーンで活躍したユダヤ人作家です。ナチスドイツがオーストリアを併合し、ツヴァイクの本は焚書になります。彼は亡命先のブラジルで服毒自殺します。この逸話を知って速攻でDVDを注文しました! 「ベルリン・天使の詩」(1987) ビデオを持っているのですが、観ることができていませんでした。ここに出てくる老人が図書館で本を読む姿は、パリ国立図書館で本を読むドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンの写真をもとにしているそうです。ベンヤミンもユダヤ人で、やはりナチスによって著書が焚書にされています。パリがナチスドイツによって陥落したあと、ベンヤミンはスペインに逃げ込みますが、入国を拒否され服毒自殺します。ベルリンは2016年夏に行って、再訪したいと思っている街。この映画を観たら、再訪熱がさらに高まりそうな予感がします。 「ソフィーの選択」(1982) たいへん有名な作品ですね。私でもタイトルは知っていました。ソフィーはアウシュビッツから生き延びたポーランド人女性です。この作品でソフィー役のメリル・ストリープはアカデミー賞主演女優賞を獲得しています。本書を読んで、ソフィーが一体何を選択したのか、その結果、何が起こったのか、結末まで全部わかってしまいました。もう少しネタバレを控えてほしかったかな(笑)。それでも、ますます観たくなりました。こちらもDVDを取り寄せました! 映画と本の意外な関係!
町山智浩 (著) インターナショナル新書 映画のシーンに登場する本や言葉は、映画を読み解くうえで意外な鍵を握っている。本書は、作品に登場する印象的な言葉を紹介し、それに込められた意味や背景を探っていく。原作小説はもちろん、思わぬ関連性を持った書籍、劇中で流れた曲の歌詞にまで深く分け入って解説。紹介する作品は、『007』シリーズや『インターステラー』から、超大国の裏側がわかるドキュメンタリー映画まで。全く新しい映画評論! 出典:amazon ![]() 橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師 同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。 BLOG:http://chekosan.exblog.jp/ Facebook:nobuko.hashimoto.566 ⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら |