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教養は「事典」で磨け(成毛眞)

言葉は生き物で、常に生まれたり消えたり変化していく

教養は「事典」で磨け
ネットではできない「知の技法」
成毛眞 (著)
成毛さんは、マイクロソフトの社長も務められたことのある著名なビジネスマンですが、無類の本好きとしても有名です。書評サイト「HONZ」を主宰し、本に関する著作も多数あります。本書はその成毛さんが辞書・辞典・事典・図鑑を読む楽しさを教えてくれる本です。

事典といえば、何かを調べるために編まれた本で、権威があって難しいという印象をもつ人も多いと思います。しかし成毛さんは事典を、「文字通り読む」ことを推奨します。それも疲れたときに読むのに最適だと言います。ひとつの項目が短く完結しているので、さらさらと読めるからです。また小刻みな知のインプットが刺激となって、元気が出てくることもあるそうです。さらに、広く浅く小さな知識を仕入れていくと、ものごとを俯瞰して捉えることができるようなってくるというのです。

本書は、成毛さんが選んだ56冊の大小さまざまな「事典の事典」になっています。紹介文がユーモアたっぷりで、例えば『城のつくり方図典』については、「これから城を建立する予定のない人にもおすすめの、城ブックである」といった具合です。

本書のなかで私が特に惹かれて現物を手に取ったのは、飯間浩明『辞書には載らなかった不採用語辞典』(PHP/2014年)です。飯間さんといえば、以前このコーナーで『辞書に載る言葉はどこから探してくるのか』をご紹介しました。この本は、『三省堂国語辞典』の編纂者である飯間さんが街を歩いて採取した言葉たちの本なのですが、『辞書には載らなかった不採用語辞典』は不採用になった言葉たちを紹介している辞典です。

実際、万の単位で言葉を拾い集めても、そのほとんどは辞書に掲載されないそうです。『辞書には載らなかった不採用語辞典』は、これ普通に使ってるとか、これは聞いたことも見たこともないとか、単純に読み物として楽しむこともできます。また解説を通じて、その言葉の由来や、ひいては日本語の一般法則について知ることもできます。言葉は生き物で、常に生まれたり消えたり変化したりしていくのだなあと実感できる本です。

実は私も数年前から大学で、図書館に並ぶ事典や白書、統計などの参考図書と呼ばれる書物を手に取って、興味をひかれたものを人に紹介する、という授業をしています。事典類はあらゆるジャンルを網羅していて、非常にたくさんの種類が出版されています。中にはとてつもなくマニアックなものもあるので、誰でも一冊や二冊は関心を持てるものがあるのです。

それに事典類は、全編を読み通す必要がないうえ、見た目や情報の伝え方にこだわって作られているので、案外とっつきやすくて面白いものが多いです。多くの人が関わり、時間をかけて作り上げているので、お値段が張るものもありますが、内容の濃さからすればかなりお得です。ぜひ本書を全編読んで、気に入った事典を手に取ってみてください。
教養は「事典」で磨け
ネットではできない「知の技法」
成毛眞 (著)
光文社新書(2015年)
辞書・辞典・事典・図鑑。これらを、引いたり調べたりするものだと思ってはいないだろうか。また、大人になってからはすっかり縁遠くなってしまった、という人はいないだろうか。実は辞書や事典は、生涯をかけて読まれるべき、実に面白い「本」である。いまやインターネットでなんでも調べられるが、そこで得られる知識は、入力したキーワードから予測される範囲の事柄にすぎない。一方、辞書や事典を読むのにキーワードはいらない。適当にページを開けば、必ず知らない何かが記載されており、思いもよらなかった知識を得ることができるのだ。本書では、こうした類の本を「事典」と定義し、おすすめの作品を紹介する。 出典:amazon
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橋本 信子
同志社大学嘱託講師/関西大学非常勤講師

同志社大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。同志社大学嘱託講師、関西大学非常勤講師。政治学、ロシア東欧地域研究等を担当。2011~18年度は、大阪商業大学、流通科学大学において、初年次教育、アカデミック・ライティング、読書指導のプログラム開発に従事。共著に『アカデミック・ライティングの基礎』(晃洋書房 2017年)。
BLOG:http://chekosan.exblog.jp/
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⇒関西ウーマンインタビュー(アカデミック編)記事はこちら



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