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SSSS Snake Art & Allegory by Gita Wolf

手漉きの紙に美しく映える、インドのへびにまつわる物語

SSSS Snake Art & Allegory
by Gita Wolf, Illustrated by Ianna Andreadis
今年はへび年です。へびには、怖いと同時に、近寄りがたく、神秘的なイメージがあるのではないでしょうか。

へびにまつわる神話は、世界中にあって、ギリシャ神話にも、インド神話にもへびが登場します。

この絵本は、インドのへびにまつわるお話を集めたもの。ハンドメイドの絵本で有名なタラブックスの出版で、創業者で代表の Gita Wolf が文章を、ギリシャ出身のアーティスト Ianna Andreadis がイラストを描いています。

18cm四方の小型の本で、シルクスクリーン印刷。毛筆の書のようなアートが、手漉きの紙に美しく映えています。黒がメインで、一色加えられているページもあり、筆跡まできれいに再現されていて、見入ってしまいます。

最初は、Vrtraという巨大なへびのお話。世界で一番高い山の頂上に横たわり、地球のまわりにとぐろをまいて、水が留まるように守っていました。あまりに強い力を持っていたので、神々の王である Indra と戦争になります。へびたちは、雨を操り、大きな地震を起こすことができましたので、大変な戦いになりました。ついにVrtraは破れますが、へびたちの力は、崇拝されるようになり、黒へびのAsitaは東、縞へびのTiraschirajiは西、毒へびのSvajaは南、クサリへびのPrdakuは北の、それぞれ守護者となりました。

ヒンドゥー神話の神々の中心は、三大神である創造神ブラフマー、維持神ヴィシュヌー、破壊神シヴァです。ヴィシュヌーには、10の化身、アバターがありますが、8つめのアバターは、Krishnaで、9つめは、Buddha お釈迦さまです。

Krishnaは、有名な聖典バガヴァッドギーターに登場する神様ですが、子どものときは、いたずら好きで、いろいろなエピソードがあり、ここではへびにまつわるお話がありました。

昔、Kalingaという巨大なへびが湖に住んでいました。邪悪で毒を持ち、湖に近寄る生き物はすべて殺してしまいました。ある時、Krishnaが、皆で湖の近くにキャンプにやってきました。湖には近寄らないように厳しく注意を受けましたが、わざとボールを湖に落として、飛び込みます。Kalinga は、すぐにやってきて、110の頭から毒を浴びせました。

怯えた皆が集まってくると、Kalinga が Krishnaに巻き付いているのが見えましたが、Krishnaは笑っています。Krishna はどんどん大きくなって、Kalinga のしっぽをつかんで振り回し、楽しそうに踊り出しました。Kalinga は、観念し、以後二度と悪さをしなくなりました。

スーパーパワーを持った Krishna のお話は、漫画のようで楽しいです。

お話は、Cosmic Snakes, The Underworld, Epic Snakes, Partly Human, The Buddha’s Snakes の5つのパートに分かれています。

へびと人間のせつない恋物語や、Buddhaのお話もあります。1ページほどの短いお話を集めたものなので、好きな箇所から読むこともできます。

心地いい手触りの、手漉きの紙をつかったハンドメイド絵本で、インド神話の世界に触れてみるのはいかがでしょうか。
SSSS Snake Art & Allegory
by Gita Wolf, Illustrated by Ianna Andreadis
Publisher: Tara Books
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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