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Hot Dog by Doug Salati

猛暑の都会から抜け出したワンちゃんの物語

Hot Dog
by Doug Salati
今年の夏は、とっても暑いですよね。出かける度に汗だくになって、シャワーを1日に何度も浴びたりで、ほんとうにぐったりしてしまいます。

この絵本は、そんな猛暑に我慢の限界を超してしまう、ワンちゃんの物語です。

舞台はニューヨーク。ダックスフンドってホットドッグの語源にも関係あるんですね。その赤毛のダックスフンドが、飼い主の女性に連れられて町に出かけます。
“City summer
steamy sidewalks

concrete crumbles
sirens screech

so hot!
can’t sit
or sniff”
いかにも暑そうで、騒がしく、ごった返した町。

道路の工事でほこりがまい、消防車のサイレンが鳴り響き、たくさんの車、人、自転車が行きかいます。

暑すぎるためか、透明になってしまっている人々も。

ワンちゃんは、そんな町中を、人とぶつかりそうになりながら歩くうち、ついに、横断歩道の途中で一歩も動かなくなってしまいます。
"Too close! too loud! too much! That's it!"
飼い主の女性は、そんなワンちゃんの様子に気づき、即座に町からの避難を決行。

タクシーを呼び、地下鉄に乗り、フェリーに乗り継いで島に到着。

湿地を抜けてビーチへ。

リードを外してもらったワンちゃんは、思い切り自由に走り回ります。

波とおいかけっこしたり、石拾いをしたり、あざらしと遊んだり。ワンちゃんも女性も、とっても楽しそう。

やがてビーチは美しい夕日に包まれます。

遊び疲れて町に戻ると、町の人々もクールダウンしていました。

エレベーターも無い質素なアパートで、簡単な夕食をすませ、ふたりは楽しい夢を見ながらぐっすり眠ります。

猫派の私ですが、この絵本にとても魅力を感じました。大きなメガネをかけた初老の女性が飼い主で、リラックスしたおしゃれな様子も素敵。

イラストの技術も素晴らしく、ゆがんだ線と、細かく書き込まれた町並みが、いい感じに調和しています。

暑い町中は、オレンジ色が基調の縦のコマ割りで、ビーチは爽やかな青色で水平方向のコマ割りで描かれています。

フェリーに乗っているときや、日の暮れた町中に吹くの風も感じられそうだし、太い筆で描かれた空の表現も素敵。

カバーはビーチで気持ちよさそうなワンちゃん、中身は、横断歩道で立ち往生しているワンちゃんを、女性が心配そうにのぞきこんでいるシーンで対照的です。
見開きには、ワンちゃんのいろんなポーズが描かれていて可愛らしく、価値のある一冊です!

著者のDoug Salatiは、意外にも若い男性で、ニューヨーク在住。イラストレーターで、この絵本が初めて文章も手がけた作品です。

2023年のコルデコット賞と、エズラ・ジャック・キーツ賞をダブルで受賞しました。 日本語版は、矢野顕子さんが翻訳されていて話題です。
Hot Dog
by Doug Salati
Publisher: Alfred A. Knopf
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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