こねこのみつけたクリスマス(マーガレット・ワイズ・ブラウン)
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![]() 魔法のようなテキストをじっくり味わえる絵本 こねこのみつけたクリスマス
マーガレット・ワイズ・ブラウン(文) アン・モーティマー(絵) 今年も華やかなイルミネーションが楽しめる季節となりましたね。
…と言いつつ、街へ出る機会がないため、そのはずだよね?の話ですが(苦笑) ともあれ、クリスマスシーズン到来です。この時期にぴったりの絵本をご紹介します。リアルで美しい絵が目を引く一冊です。 これは、クリスマスイブのアットホームな風景を、ネコ目線で描いた作品です。 絵の技法だけでなく、ネコがみせる愛らしいリアルな仕草を眺めているだけでも、充分に満足できちゃうところではあるのですが。 その上で「絵を眺めるだけではもったいない!」と言わしめる、魔法のようなテキストを、じっくり味わって頂きたい作品です。 どんなにリアルな絵にも、表現しきれないものがあります。 それは、周囲に漂っている音や気配、香りや温度。 当たり前の話ですが、これらは、絵に落とし込むには不向きな要素です。読み手が持つ過去の経験や想像力を、文章表現で引き出し、増幅させることで、ようやく具体的なイメージを伝えるに至ります。 例えば、この短い文はどうでしょうか。 「なにもかもが しずかなときには、とおくの おとが きこえるもの。」
その場がいかに静かであるか、ということだけにとどまらず、自らの動作も止め、じっと耳をすませようと集中している感覚をも伴ったイメージが、意識の中にムクムクと膨らんできませんか?
逆説的な伝え方がまた、素敵です。 作中では、こうした文がリズムよく続きます。五感に訴えかける文章表現には、読み手の想像力を巧みに引き出そうとする工夫とセンスが溢れています。 この作品を通して、自身の想像力が“引き出される感覚”を味わってみれば、添えられた絵がリアルなだけに、「普段、視覚以外の感覚をなおざりにして、いかにそれだけで満足して(わかったつもりになって)いるか」ということに、はっとさせられます。とても興味深い体験ですよ。 忙しい日常の中に、ささやかに点在する楽しい時間。せめてその時くらいは、五感をフルに働かせて、濃密に過ごせたらいいなあって思います(それがなかなか、難しいんだけど)。 今年は誰にとっても大変な一年でしたから、例年とは比較にならないほど労いの気持ちがわいてきます。混乱の中、みんなそれぞれの立場で本当によく辛抱したし、頑張りましたよね。「来年も大変かもね…」なんてことは、束の間だけでも、忘れてしまいたいなあ。 皆様、今年一年、本当にお疲れ様でした。そして、読んで頂きありがとうございました。 来年もどうぞよろしくお願い致します。 こねこのみつけたクリスマス
マーガレット・ワイズ・ブラウン(文) アン・モーティマー(絵) 中川千尋(訳) ほるぷ出版 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |