はるとあき(斎藤倫・うきまる)
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![]() 会えない二人の心の交流 はるとあき
斎藤倫・うきまる(作)/ 吉田尚令(絵) 雨ばかりだった7月にうんざりしていたけれど、8月の酷暑が本当に厳しくて。とはいえ、朝夕ほんのわずかだけれども、秋の気配を感じるようになってきました。
「私は(春生まれだけど)秋が好きです」と、ここでも度々ふれてきたのですが、この時期は例年、ささやかな秋の気配にほっとし始める頃です。 2年前の秋に父を亡くしてからは、懐かしさと寂しさが入り混じった切ない気持ちも少々呼び起こされるのですが、そうした感情もひっくるめて、秋はよく味わって過ごしたいなあと思う季節です(もちろん胃袋的にも・笑)。 今回ご紹介する絵本は、季節のサイクルの中で、決して交わることのない「はる」と「あき」を女の子に見立てて、会えない二人の心の交流を描いたお話です。 「ふゆ」の終わりに、眠りから目覚めた「はる」。それから数か月が経って「なつ」がやってきたとき、ふいに「なつ」はこう言います。 「ようし あきが くるまで がんばるぞ」 そういえば わたしは「あき」にあったことがない。 どんな子なのかな?と興味を持ち始めた「はる」は、「あき」に手紙をかき、「なつ」に預けます。 そうして「なつ」と「ふゆ」を介して、二人はペンフレンドになりました。 「はる」が書いた手紙、「あき」が書いた手紙。ふたりが手紙で自分の個性を伝え合うやりとりが、見開きごとに展開してゆきます。 ページをめくるごとに、交互に描かれる春の魅力と秋の魅力。柔らかくて優しいイラストが、手紙に綴られる言葉の印象とぴったんこ過ぎて、どの見開きも、とっても愛おしい。 「わたしたち おなじもの みてるのに こんなに ちがうんだ」 桜や楓の木が春と秋とでは全く違う様子でいることに、ともに驚いたりしながら、「はる」と「あき」は交流を深めます。 だけど二人が直接会うことは決して叶わないと、お互い理解してもいるのです。やがてその気がかりは切なさに変わって。 同様の状況に自分が直面したならば「結局会えないのだったら意味ないし」って、やっぱり悲観してしまいそうな気がするのだけれど、この作品は「そうじゃないよ」って、素敵な答えが用意されています。 もしかしたら、お気に入りの絵本をこうして毎月ご紹介するときの気持ちって、「はる」が「あき」に手紙を書くときの気持ちに似てるかもしれないなあ。 いつも読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。たとえ面識がなくとも、皆さんの心の中で、お気に入りを共有して頂けていたなら嬉しいです。 はるとあき
斎藤倫・うきまる(作)/ 吉田尚令(絵) 小学館 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |