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Patience, Miyuki(Roxane Marie Galliez)

うっとりしてしまう、フランス版レトロ和風絵本

Patience, Miyuki
by Roxane Marie Galliez
illustrated by Seng Soun Ratanavanh
この美しい絵本は、フランスのものです。英訳版で、原題は『Attends Miyuki』

イラストはラオス生まれのSeng Soun Ratanavanhが描いています。

日本の kawaii 文化にインスパイアされたそうですが、キティちゃんやアニメのキャラクターではなく、芸者さん、浮世絵、折り紙、鮨、東京の街並みなどに影響を受けているとか。

レトロな和風だけど、エキゾチックで、色鮮やか。センスの良さが感じられます。

本のカバーは、艶のないマットな紙。表紙をめくった見返しは、Miyukiの服と同じ赤い手書きの千代紙模様で、ページをめくるのが楽しくなります。

著者のRoxane Marie Galliez は、TVジャーナリストとして、ギリシャ、トルコ、イタリア、ポリネシアの島々などを数年かけて巡りました。異国の文化や神話に深い興味を持ち、絵本以外の著書も多数。

Miyukiシリーズは、この絵本を最初に3冊あります。2冊目は桜庭一樹さんが翻訳、『おやすみ、ミユキ』として出版されています。

『Patience, Miyuki』は、春の絵本なので、今回取り上げました。個人的に、こちらの作品の方がシンプルで好みでもあります。
Blue earth, orange moon, Spring was all dressed up and ready for her first day of the year. Miyuki was ready, too.
春は女性なのですね。春の最初の日は春分なのでしょうか。文章も詩的で素敵です。

Miyukiと花や小鳥の大きさからして、彼女がおやゆび姫くらいの小人であるのが分かります。

Miyukiは、おじいさんと二人で暮らしています。

春の最初の日に朝早く起きて駆け回り、まだ眠っているおじいさんを起こします。

きれいに咲く桜の木や草花におはようを言います。

すると足元に小さな花がまだ蕾のままで眠っているのに気づきます。

Miyukiは小さな花を起こそうとしますが、おじいさんに止められます。
“Be patient, Miyuki. This little flower is not ready to open. It is precious and delicate and needs the purest and finest water…”
Miyukiはおじいさんが話し終わるのを待たずに、purest waterを汲もうとバケツを持って走りだします。

井戸は枯れていて、雲にも断られ、なんとか手に入れた水も転んでこぼしてしまいます。

あまりに遠くまで走ってきたので、道にも迷ってしまいました。

疲れ果てたMiyukiの耳に川の歌声が聞こえます。

彼女の家の近くを流れる川の聞き覚えのある歌でした。

あれ、家の近くを川が流れていたんだ!

川は言います。
“Be patient, Miyuki. Sometimes it is necessary to slow down. I will take you home, and then you can have some of my water.”
折り鶴に乗って家に着く頃には眠ってしまって、おじいさんが彼女を家に連れ帰ります。

子どもらしく、真っ直ぐでせっかちなMiyukiと、それを宥める周囲のものたち。

あと少し、あと少し、と気持ちばかり急いて空回りしてしまい、気づくと時間ばかりたっている事って大人でもありますよね。

時にはスローダウンして、季節の移り変わりをゆったり楽しみたいものです。


持っているだけで嬉しくなる、独特な雰囲気の綺麗な絵本です。

本屋さんで見かけたら、是非ページをめくってみてください。うっとりしてしまうかもしれません。

3作目の英語版は今年の秋に発売になります。フランス語が読めると良いのですが。。。

楽しみです。
Patience, Miyuki
by Roxane Marie Galliez
illustrated by Seng Soun Ratanavanh
Publisher: Princeton Architectural Press
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/



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