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Alice's Adventures in Wonderland

奥深いアリスの世界

Alice's Adventures in Wonderland
by Lewis Carroll and Helen Oxenbury
不思議の国のアリスのストーリーは皆が知っていると思いますが、いろいろなイラストレーターが絵を描いていることをご存知でしょうか。

気になって購入したものの、そのまま置いていたHelen Oxenburyの現代的なイラストのアリスを読了しました。

"Alice's Adventures in Wonderland" が最初に出版されたのは、1865年。夏目漱石が生まれたのが1867年、明治時代が始まったのが1868年なので、相当な昔であることが分かると思います。

文章が難解なイメージがあったのですが、意外にとても読みやすく、内容が面白いのですんなり読むことができました。

これ以前の児童文学は教訓的な内容のものばかりだったという事で、替え歌や皮肉がいっぱい含まれているようですが、背景を知らなくても、分からない部分は読み飛ばしてしまっても、十分に楽しむことができました。

日本のこの時代の文章に、現代的なイラストをつけても、こんな風に絵本にはできないだろうと思うと不思議な感覚です。

みなさんのアリスはどんなイメージでしょうか。ディズニー映画のイメージでしょうか。または、John Tennielの不思議な世界の詳細なイラストのイメージでしょうか。

John Tennielのちょっと怖い感じのイラストも強く印象に残っていて大好きですが、このカラーのHelen Oxenburyの絵本は素晴らしいです。

アリスが現代に生き返った感じです。イギリスでは、1999年にKate Greenaway Medalを受賞しました。

Helen Oxenburyのイラストは、"We’re Going on a Bear Hunt" でも有名です。
アリスの目は点で表現されていて、シンプルに見えますが、表情豊かです。実際に、何度でも納得ゆくまで描き直されるという事です。

アリス以外の登場人物は、服を着ているものは古めかしい服装をしていて、オリジナルのイメージを損なっていないように思います。

この絵本でアリスを最初に読んだ子どもたちは、アリスがこのイメージになるのですね。面白いですね。

この原稿を書くにあたって、以前から欲しかったアリスの絵本をいろいろ購入してしまいました。

草間彌生のアーティスティックなもの、Robert Sabudaの繊細な仕掛け絵本、ちょっと大人っぽい感じの Lisbeth Zwerger のもの。
Lewis Carrollの手書きの文章とイラストを再現した絵本も入手しました。

不思議の国のアリスは、Lewisが実在のアリスとその姉妹に即興で話して聞かせたストーリーが元になっています。

お話がとても気に入ったアリスに頼まれ、"Alice's Adventures Under Ground" (『地下の国のアリス』)というタイトルで、手書きの絵本を作ってプレゼントしたのがきっかけでできたのが、"Alice's Adventures in Wonderland" です。

聖書やシェイクスピアと並んで数多くの国の言語に翻訳されて広まりました。即興で作られたお話は、今の半分ほどの長さでしたが、並外れた想像力ですね。

続編の "Alice Through the Looking-Glass"(『鏡の国のアリス』)にもHelen Oxenburyのイラストの絵本が出版されているので、ぜひ読んでみたいです。

友人に誘われた「アリス・イン・サイエンスワールド」の展覧会がきっかけで、この絵本を取り上げましたが、アリスの世界は奥深く、関連の書籍や映画も数多く存在することを再認識しました。

理解できない部分があるのも大きな魅力の一つです。

みなさんも、これを機会に一冊手にとってみてはいかがでしょうか。新しい発見があると思います。
Alice's Adventures in Wonderland
Lewis Carroll (著)
Helen Oxenbury (イラスト)
Walker Books Ltd
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
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