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The World Is Round by Gertrude Stein & Clement Hurd

不思議なストーリー『世界はまるい』

The World Is Round
by Gertrude Stein & Clement Hurd
本屋さんで日本語版の『世界はまるい』を何度か見かけ、英語版を入手しました。

表紙もブルーにピンクのイラストが印象的で可愛らしいですが、中身もピンクの紙にブルーの文字で印刷されていておしゃれです。

編集者とイラストレーターは、『おやすみなさいおつきさま』や『ぼくにげちゃうよ』の絵本を手がけた Margaret Wise BrownとClement Hurd で、著者は Gertrude Stein という豪華な顔ぶれ。

Gertrude Steinはアメリカ人ですが、フランスに移住しました。主人公の Rose のモデルは近所に住んでいた女の子。イラストもどこかフランス風です。

主人公Roseの好きな色が青なので、著者の希望でこの色調になりました。

1939年の初版印刷時には苦労もあったようですが、今でも目を引くデザインです。

中身も一風変わっています。不思議の国のアリスを思わせるような、不可思議でナンセンスで韻をふんだんに使った文章。

Roseはよく歌を歌います。
I am a little girl and my name is Rose, Rose is my name.
Why am I a little girl
And why is my name Rose
And when am I a little girl
And when is my name Rose
And where am I a little girl
And where is my name Rose
And which little girl am I am I the little girl named Rose which little girl named Rose.
小さい女の子の思考を再現したような実験的な文章が印象的です。

子どもが英語で読むと混乱しそうですが、大人なら声に出して読むのが楽しいです。

ストーリーも不思議で、読んでいるうちに引き込まれます。

Roseは自分のことや、自然のこと、動物のことなど色々考えては、泣き出してしまします。

明るい色調と可愛いイラストのためか、悲しいお話には感じられないのですが、何度も泣いてしまいます。

この復刻版の絵本では、forewordをClement Hurdの息子の Thacher Hurdが、afterwordを妻の Edith Thacher Hurd が書いています。

Edith Thacher Hurdによると、この本のコアの部分はとても真摯なものだということ。

Rose は、高い山を青色のガーデンチェアを持って一人きりで登ります。何日もかけて、つらい思いをしながら登ります。

最後には山を登りきり、虹の中で椅子を置いて座ります。

これは著者の生活を映し出したものだと Edith は考えます。

戦争が激しくなったため、Gertrude SteinとClement Hurdは直接会う事はできませんでした。

RoseがいとこのWillieからライオンをもらったり、ライオンが消えてしまったりするのも何か意味があるのでしょうか。

ライオンの名前はBillieです。私は The end of Billie the lion. のところの挿絵、二頭のライオンのお尻が並んだイラストが好きです。裏表紙にもなっています。

Gertrude Steinは、ピカソの友人で、若い頃に美術批評家の兄とパリで開いていたサロンには著名な画家や詩人が集っていました。

この絵本が出版されたのは64歳の時ですが、翌年には、フランスはナチス・ドイツに侵攻されています。ユダヤ人であったGertrude Steinは、アメリカ人として田舎で暮らす事で難を逃れました。

時代背景も想像しながら読んでみると、より楽しめるのではないでしょうか。
The World Is Round
by Gertrude Stein & Clement Hurd
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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