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The Night Life of Trees by Bhajju Shyam

圧倒的な絵の美しさと存在感

The Night Life of Trees
by Bhajju Shyam
このシルクスクリーンのハンドメイドの美しい絵本は、南インドの玄関口、チェンナイにある小さな出版社Tara Booksのものです。紙も古布からリサイクルで作られ、製本もすべて手作業です。

2008年ボローニャ国際絵本原画展で絶賛され、ニューホライズン最優秀賞を獲得しました。

先日、絵本展で初めて手にし、どうしても欲しくなってオンラインショップで購入、インドから10日ほどで届きました。

昼間とは違った顔を見せる夜の木の物語は、インド中央部Gond族の伝承にもとづいています。

1ページに1つの木の絵が、夜の闇に鮮やかに浮かび上がるように描かれていて、見開き逆のページには、木に纏わるお話が書かれています。

圧倒的な絵の美しさと、存在感です。3人のアーティストによる合作ですが、とても神秘的で奥深く、独特な世界感に心が揺さぶられます。

表紙の木は、版によって異なり、私が入手したものは、The Tree of Intoxication - 酔いの木でした。日本語版では、「飲み過ぎにご用心」と訳されていて、私にぴったりです。

1つ前のThe Marriage of Desire and Intoxicationから、お話が続いています。

The Ganja plant と Mahua treeは、昔は人間で、恋人同士でした。カーストが異なるために結婚を許されず、ジャングル深くに逃れて二人で暮らしました。死後に木に生まれ変わりました。

創造主である Shankar Bhagwanは、二人の美しい愛を見て、この木を GanjaとMahuaと名付けました…

Ganjaは大麻、Mahuaはアルコールの元になる木です。これは、どう解釈すれば良いのでしょうね…

Gond族は、Mahuaの花からお酒を作ります。お酒は少し飲めば薬になり、もう少し飲めば楽しい気分にしてくれます。
But if you drink too much, your very form can change, and depending on your character, you may become a mouse or a tiger, a pig or a pigeon.
なるほど!これが表紙のイラストになります。私の性格なら、どの動物になるのかな。飲み過ぎには用心しなければなりません。

Tara Booksは、ギータ・ウォルフとV・ギータの二人の女性が立ち上げた出版社です。インドには、自国のお話の絵本がほとんど無かったことから、子どもたちに伝承を伝える絵本を作ろうという事で始められました。

出版物のうち20%は、ハンドメイド作品。インド各地の伝承の取材を繰り返し、無名の作家や、民族画家たちと長い時間を掛けて対話して作ったものも数多くあります。

海外のアーティストとコラボレーションしたものや、絵本以外の本も出版されています。数は多くないものの、魅力的な本ばかりです。

Tara Booksは、どんなに本が売れても、今のスタイルを続けるため、規模を拡大するつもりはないそうです。

この時代に、こんな哲学を持った出版社があるとは、とても素敵な事ではないでしょうか。今後出版される本も楽しみです。
The Night Life of Trees
by Bhajju Shyam, Durga Bai, Ram Singh Urveti
出版社:Tara Books
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/



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