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Ada's Violin by Susan Hood

ゴミを楽器に。音楽は希望を誘う

Ada's Violin
by Susan Hood
南米の小さな国、パラグアイのRecycled Orchestraの実話を元にした、感動的な絵本です。

リサイクルド・オーケストラは、ゴミからリサイクルした楽器を演奏する子どもたちのオーケストラです。

Cateura は、首都Asunicion 近郊の町で、そのメインの “landfill”、ゴミの埋立地であり、毎日1,500トンものゴミがトラックで運ばれてきます。

南米の中でも貧しい地区で、多くの人々が1日2ドル以下で暮さねばなりません。住民は、ゴミの中からダンボールやプラスチックなどのリサイクルできるものを探し出し、売る事で生計を立てていました。

1日に14時間以上の長時間労働。子どもたちは、表向きは労働を禁止されていますが、実際は働かざるを得なかったり、喧嘩や犯罪などの問題に巻き込まれてしまったりする事も多い状況でした。

そんな中、ゴミのリサイクルの仕事をする人々に安全指導を行うためにやってきたFavio Chavezは、何か自分にできる事は無いかと考え、子どもたちに音楽を教える事にします。

希望者が殺到したため、楽器の数が足りません。また1台のヴァイオリンは家よりも高価であり、持ち帰って練習することは現実的ではありませんでした。

Favio Chavezは、Les Luthiersという自作の楽器で演奏した人気バンドを思い出し、ゴミから楽器を作ることを思いつきます。

recycler で carpenter でもある 手先の器用な Nicolas の協力を得て、ゴミからドラム、ヴァイオリン、チェロ、フルートなどの様々な楽器を作り出し、子どもたちに行き渡らせることに成功しました。初めて自分の楽器を手にした子どもたちは大喜びです。

演奏の練習は、毎日の積み重ねであり、最初は特に大変です。中には断念してしまう子ども達もいましたが、Adaは熱心に毎日練習を続けました。

Chavesは、演奏の指導とともに、お互いを尊重すること、いつでも他人に親切である事の大切さを教えます。

そしてRecycled Orchestraが誕生しました!

練習場が無く、野外で練習しましたが、Cateuraの町は音楽に溢れ、雰囲気が変わり始めます。

子どもたちは音楽を通じて違う世界に思いを馳せ、希望を抱く事ができるようになりました。

皆の演奏が上達すると、あちこちから演奏の依頼が寄せられます。Cateuraから、首都のAsuncionから、そして他の町、ついには他の国々からも!

2013年には、日本にも来た事があるのですね。知りませんでした。

2015年には、「Landfill harmonic」というタイトルでドキュメンタリー映画も公開されまています。

Youtubeで、実際の演奏や、楽器の作り方などの動画を見ることができます。弦楽器は、楽器の中でも取得がとても難しいと思いますが、リサイクルの楽器で素晴らしい演奏をする子どもたちに感動しました。

絵本のイラストは、実際の人々に似せて描かれていて、アーティスティックで、とても臨場感があり、素晴らしいです。

“The world sends us garbage, we send back music.” という映画のフレーズも素敵。

現実世界では色々な問題もあるようですが、現在進行形のこの活動を、今後も応援したいです。
Ada's Violin
by Susan Hood, Illustrated by Sally Wern Comport
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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