どうながのプレッツェル(マーグレット・レイ)
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![]() 清々しいほど、いかにもアメリカ!な味わい どうながのプレッツェル
マーグレット・レイ あけましておめでとうございます。
今年の干支「戌」にちなんで、今回は犬の絵本をご紹介します。アメリカの作品で、二匹のダックスフントのお話です。 この作家による作品では「おさるのジョージ」シリーズのほうが有名かもしれませんが、本作も定番のロングセラー絵本。懐かしい!とお感じの方も多いのではないでしょうか。 ひときわ胴体の長い、ダックスフントのプレッツェルは、お向かいに住むグレダのことが大好きです。 最初はつれないグレダでしたが、彼女がピンチに陥ったところをプレッツェルが助けることで、二匹の距離がぐっと近づいて結ばれるという、子供にとっても非常にわかりやすい、安心の起承転結です。 が、もちろん、それだけならここでおすすめしたりしません。あらすじでは伝わらない、大人の私たちにとっての魅力は、この二匹の見た目と中身のギャップです。 見た目は絵本の王道をゆく和み系の彼らですが、中身は共にグイグイ系。自信家のナイスガイと勝ち気なヒロイン、といったところでしょうか。 プレッツェルが思いを寄せても、グレダは笑うだけ。時には面と向かって「胴長なんて、大嫌い」と、とびきりキュートな笑顔で言い放ちます。 そんな彼女のつれない反応に、プレッツェルも負けじと、とびきりごきげんな笑顔で返します。「胴が長いほど立派だということを知らないのかい?僕はドッグショーで優勝したんだぞ」 さらに「結婚してくれたら何でもしてあげる」と言い募れば、「それを証明して」とグレダが迫ります。 …往年の欧米映画か?といった、それはもうコッテコテのベタな恋のかけひきを、愛嬌たっぷりの二匹がグイグイ展開します。 そのギャップはもちろん楽しいのですが、展開のお約束的な感じも、個人的には嫌いじゃなくて(笑)そこに負の感情は一切伴わず、きついセリフが紛れてても、カラッとしていて嫌みがない。 子供達が読んだ時、やりとり自体は理解できなくても、二匹のにこやかな様子に安堵し、「ふざけ合うことを楽しんでいるのだな」という雰囲気だけは、しっかり印象として与えるのですから、さすがです。 そしてこの後に続く、グレダの無邪気な厚かましさも、やっぱりコテコテでええ感じ。ぜひ実際に読んでお楽しみ頂きたいところです。 ポジティブな感情でじゃれ合いながら、相手をしっかり口説いた上で、ちゃんと行動でも示して信頼を勝ち取る。清々しいほど、いかにもアメリカ!な味わいに、爽やかな好感を抱く作品です(コテコテなのに)。 私自身も相変わらずの調子ではありますが、今年も色々ご紹介していきたいと思いますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。 どうながのプレッツェル
マーグレット・レイ(著) H.A.レイ(絵) わたなべしげお(訳) 福音館書店 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |