関西で働く女性のライフスタイルマガジン［関西ウーマン］

PenguinBooksのデザイナー、CoralieBickford-Smithの最初の自作絵本です。

美しい表紙を見ると手に取りたくなりますが、中のイラストもとても素晴らしい。

色調は抑えられていて、お話が進むにつれて色味が少しずつ変化します。詳細に描かれたデザイン画の豊かな表現に見惚れます。

文字の配置のしかたもユニークで、TypographyとGraphicCommunicationを学び、本のカバーデザインをたくさん手がけてきた著者ならではなのではないでしょうか。

Kindle版もありますが、是非紙の本で楽しんでいただきたいです。

物語は民話風で、深い森に住む小さくて怖がりなキツネのお話です。キツネの唯一の友達はStarでした。

Starは生い茂った深い森の中でもキツネの行き先を照らしてくれました。Starのおかげでカブトムシをとったり、絡み合った棘の中を走り抜けたり、ウサギを追いかけたりすることができました。

雨の中ですら怖くありませんでした。キツネはStarのおかげで幸せでした。

しかし、Starは突然姿を消してしまいます。何もかもが変わってしまいました。キツネは、真っ暗闇の中で戸惑い、巣に引きこもってしまいます。

くる日もくる日もStarの帰りを待ってじっとしていたキツネですが、ある時、思いがけず美味しいカブトムシを食べて少し元気になり、Starを探しに出かけることにしました。

大切にしていたもの、なくてはならないものを失い、苦しみ、そして変化を受け入れていく物語。

子どもにとってはキツネとStarの友情の物語であり、大人にとっては失ったものを乗り越えて強くなるというコンセプトにも感じられます。

著者は若い時に母親を亡くしました。読む人の置かれた状況によって様々に感じられるのが、長く愛されるストーリーとして評価されています。

シンプルなお話ですが、キツネが見上げた夜空に満天の星が輝くシーンはやはり感動します。

キツネが空を見上げる間と、空いっぱいの星、そして星の中に包み込まれているようなキツネの姿。

どことなく日本風なキツネの表情も温かみがあって愛着が湧きます。

プレゼントにしても喜ばれそうな素敵な絵本です。