おやすみ おやすみ(シャーロット・ゾロトウ )
![]() |
|
![]() 地味な配色に、平穏な夜の情景が心にすっと浮かぶ おやすみ おやすみ
シャーロット・ゾロトウ ここ関西では、今年の夏はしっかり暑かったものの、しぶとく居座ることなく、さっさと店じまいしてくれて嬉しい限りです。
夜風に秋の気配を感じるようになると、寝苦しさから解放される安堵感が伴うせいでしょうか、ベッドで布団にくるまって読書するひとときが心地よくてしかたありません。 というわけで、今月はこの絵本。 さまざまな生き物がさまざまな寝姿で、寝苦しさとは無縁とばかりにスヤスヤ眠っているだけの、シンプルな作品です。 表紙を見てまず気になるのは、何とも言えないこの地味な配色! 最初の出版は1960年とのことですが、わざわざ選んだ意図を感じるだけに、黒1色よりも地味さが際立ったような、一見して絵本のイメージに相応しくない印象を抱きます。 が、読み始めると、この地味な画面が実に心地いいことが実感できます。静かで平穏な夜の情景が、心にすっとイメージされる色づかい。 結果的には、絵本としていかに冒険的な作品であるか、製作者の大胆な色彩センスに驚かされることになります。 絵の傍らに添えられた文章も、絵と同様に、意識的に平らかな言葉づかいにまとめられている印象ですが、これが不思議と、止まった絵に動きを与えます。 彼らの安らかな寝息が今にも聞こえてきそうだし、絵だから動かないんじゃなくて、みんな深く眠っているから動かないんだと、錯覚しそうになるくらい。 この作品は、2年前の夏にご紹介した「まっててね」という絵本と同じ、シャーロット・ゾロトウによるものです。 私が好きなのは、絵本の後半、くもの巣でこぢんまりと集まって眠る、小さなくもたちの様子を描いた見開きです。 くもがこんなにも愛らしく感じられるなんて。ここで使われている比喩表現、とっても素敵なんですよ。 さて、布団にくるまっての心地よい読書も、また冬になれば寒さに邪魔されそう。 冬には例年通り…いえ、むしろ遅刻してもらってぜんぜん構わないので(笑)。 過ごしやすい時節を、一日の終わりまで隈なく楽しみたいなと思います。 おやすみ おやすみ
シャーロット・ゾロトウ (著) ウラジーミル・ボブリ (イラスト) ふしみ みさを (翻訳) 岩波書店 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |