They All Saw a Cat
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![]() 同じものでも、見え方はまったく違う They All Saw a Cat
by Brendan Wenzel 2017年のコルデコット・オナー受賞作品で、猫の絵本。猫を2匹飼っている私は読まなければと手にとりました。
”The cat walked through the world, with its whiskers, ears, and paws..”
外に出かけたネコは色々な生き物に出会います。
最初は子ども、次にイヌ、そしてキツネ… 同じネコなのに、子どもには可愛らしく、イヌには長細く、キツネには丸々としたまったく違う姿に見えます。 ここから先が予想外の展開なのですが、魚にはボヤけた巨大な姿に、ネズミにはモンスターのように、蜜蜂には点描画のような姿に映ります。 どのイラストもユーモラスで、かつとても美しい。 まだまだ先は続きます。鳥、ノミ、蛇、スカンク、ミミズ、コウモリ… 実際に動物の眼の見え方は人間とはまったく異なって、色の見え方や視力・視界もそれぞれです。 魚眼レンズがあるように、魚にはかなり歪んで見えるだろうし、蛇の中には生き物の体温がサーモグラフィーのように見えるものもいるのだとか。 同じ1つのものでも、人によってまったく違ったものに見えるのだ、という事を自然にシンプルに優しく伝えてくれる絵本です。 高校生の時の国語の先生が、「他の人が見ているものは、実際にその人の中に入って、その人の眼を通してみないと、自分と同じかどうか分からない。」と言っていた事を思い出しました。 私にとっての「赤色」と他の人にとっての「赤色」は同じじゃないかもしれない。科学的でない話ですが、とても不思議で記憶に残りました。 実際には、動物からの見え方まである程度解明できているのだから、人によっての物理的な見え方がまったく違うなどという事はないはず。しかし、何にでも個人差があるし、少しは違って見えるのかもしれない。 心理的な見え方はもっと大きく異なります。同じ空間に存在するのに、隣の人はまったく違うものを見ているのだな、と感じる瞬間は多々あるのではないでしょうか。 同じ話を聞いても、同じ本を読んでも、同じ映画を見ても、印象に残る箇所や感じることが人によって違うのは面白いよなあ、などと連想が続きます。 さて、この絵本の中で特定の動物から見た姿でないネコは、後ろ姿しか描かれていません。最後に水たまりに近寄ってネコが見た自分の姿は… どんな姿だったのでしょうね。 小さな子どもさんから大人まで楽しめる絵本です。来月の絵本の読み聞かせで読んでみようと思います。子どもたちの反応が楽しみです。 ![]()
谷津 いくこ
絵本専門士 絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。 StoryPlace HP:http://www.storyplace.jp Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/ |