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Just a Dream by Chris Van Allsburg

繊細に描き込まれた美しい絵と、ちょっと不思議なストーリー

Just a Dream
By Chris Van Allsburg
Chris Van Allsburg は、Jumanji や The Polar Express が映画化された事でも有名なアメリカの絵本作家です。

繊細に描き込まれた美しい絵と、ちょっと不思議なストーリーが特徴で、子どもよりは大人向けに描かれているようでもあります。

20冊以上の作品がある現役の作家ですが、今回は最近心に残った「Just a Dream」を紹介したいと思います。

主人公の Walter は、どこにでも居そうなテレビ好きで未来の世界に憧れる男の子。

いつものように学校の帰り道にジェリー入りドーナツを買って、袋は道端にぽいと捨ててしまいます。

隣の女の子が誕生日にもらった苗木を庭に植え、嬉しそうに水をあげているのを見て、自分の誕生日はもうすぐだけど、”I’m not getting some dumb plant,” と言い捨てます。

ゴミ捨てを頼まれると、分別せずに全部同じゴミ入れに入れてしまいます。大人でも居ますよね、こういう困った人…

さっさとゴミ捨てをすませた Walter は、大好きなテレビ番組を見ます。未来の世界で、自分専用の小さな飛行機とロボットを持っている男の子のお話です。

自分もいつかそんな世界に住みたいと夢見ながら眠りについた Walter は、ベッドに乗って未来の世界に辿り着いたのでした。

Walter のベッドが最初に降り立ったのは、一面のゴミの山。ブルドーザーがゴミを処理しています。ゴミに埋まった通りの名前を見ると、”Floral Avenue” – Walter が住んでいた通りです。
” This can’t be the future, he thought. I’m sure it’s just a dream. He went back sleep ”
次に降り立ったのは、表紙のイラストにある木の上です。2人の木こりに木を切り倒されそうになります。

クリスマス・キャロルでは、過去・現在・未来の3人の幽霊が現れて3つの幻想を見せられましたが、Walter は何度眠っても目覚めることが出来ず、酷い未来ばかりの8つもの夢を見せられます。

公害に苦しめられ、温暖化が進み、魚は居なくなり、大渋滞が発生し、美しい景色は霞んで見えなくなり、渡り鳥が休むところも無くなってしまった未来。

ひどい気分で目覚めた Walter は、パジャマのままで飛び出し、昨日道に捨てたドーナツの袋を拾い、ゴミ箱のゴミを分別しました。

この絵本が心に残ったのは、近所の小さな川べりにたくさんのゴミが捨てられ、木に引っかかっているのを目にするためです。

川は柵で囲われているので、また川べりは急斜面なのでゴミを拾うことは簡単にはできません。

誕生日に苗木をもらってお父さんと庭に植えたWalterは、その夜違った未来の夢を見ます。大きく育った二本の木と、青い空、男の人が手動の芝刈り機を押している平和な風景です。

motorless - 手動の芝刈り機、というところが考えさせられます。私たち一人一人の日々の小さな選択と行動が、未来の姿を違ったものにしていくのですね。

子どもたちが読んだらどんな感想を持つのかも聞いてみたいです。
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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