HOME  Review一覧 前のページへ戻る

うさぎのくれたバレエシューズ(安房直子)

はじめに思い描いた理想は、たとえ見失っても消えはしない

うさぎのくれたバレエシューズ
安房 直子(著)
せっかく公開予定日が4月1日というのに、面白いほら話が何一つ思いつかないので(笑)今回もいつも通り、おすすめの絵本をご紹介したいと思います。

表紙をご覧頂ければおわかりの通り、桜の時期にぴったりの作品です。

まず目を引くのは、南塚直子さんの銅版画による美しいイラストです。

私はこの、まるでパステル画にほろ苦さを加えたような、独特の雰囲気が大好きです。

明るい色彩を柔らかなタッチで操りながらも、銅版画だから甘くなりすぎない。絶妙なバランスで、大人っぽさも醸し出しています。

バレエを習い始めて5年くらいの女の子が、踊りたい気持ちで心はいっぱいなのに、なかなか上達しなくて落ち込んでいます。

ある日、見知らぬ存在からバレエシューズが届いたことがきっかけで、女の子は白昼夢を見るような不思議な経験をします。

この経験で女の子は、踊りで何かを表現することがどんなに楽しいことか、どうして踊りたいのか、見失っていた気持ちを取り戻します。

蝶や花や、風になった気持ちを味わいたい。だから私は踊る。

楽しげなうさぎのバレエ団の様子を見て、たまらず踊り出した女の子。

灰色だった心は、次第に桜色へと高揚していきます。表情もいつしか誇らしげに。

地味で殺風景な枝ばかりの木にみるみる蕾がついて、あっという間に満開となる桜のようです。

スキルアップに必要な様々な課題に直面しているうちに、すっかり元の動機や願いがわからなくなってしまうことは、大人の私たちにもよくあることですよね。

はじめに思い描いた、ピュアな理想や内なる欲求は、たとえ見失っても消えはしない。

年に一度、美しく咲き誇る桜を眺めながら、これまで歩んできた道を振り返るのもいいかもしれませんね。
うさぎのくれたバレエシューズ
安房 直子(作)南塚 直子(絵)
小峰書店
profile
恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主

小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。

毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。

ギャラリーリール(GALLERY RiRE)
大阪府堺市中区深井水池町3125
営業日:基本的に事前予約制(ご利用方法はHPご確認ください)
定休日:月曜・火曜+不定休
HP:https://galleryrire.theshop.jp/





@kansaiwoman


■ご利用ガイド




HOME