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Gorilla by Anthony Browne

Gorilla
by Anthony Browne
今年は申年ということで、 おさるさんの絵本で有名なAnthony Browneの代表作、Gorillaを選びました。

とても美しいイラストの心に深く響く作品です。

Hannahは父親と二人暮らし。

なぜかゴリラが大好きで、ゴリラの本を読んだり、 ゴリラのテレビ番組を見たり、ゴリラの絵を描いたりしますが、 本物を見たことがありません。

お父さんは、日本にも居そうな典型的なビジネスマンで、とても忙しい。

朝はHannahより早く家を出て、帰ってきてからも自宅で仕事をします。週末はぐったり。

Hannahはいつも一人ぼっち。

この絵本を開くと、こんな体験をしたことがある訳でもないのに、 不思議に子ども時代に引き戻されます。

もの静かなHannahの後ろ姿や表情で寂しい気持ちがぐっと伝わってきます。

誕生日にHannahは父親にゴリラを見に行きたいとお願いします。

でもゴリラのぬいぐるみをもらってがっかり。部屋のすみに放り投げます。

すると、ぬいぐるみはどんどん大きくなって本物のゴリラになります。

にっこり微笑んでHannahに動物園に行きたいか尋ねます。

ゴリラはお父さんのコートを着て、帽子をかぶって、二人は動物園に出かけるのでした。

動物園でたくさんのゴリラやオランウータン、チンパンジーを見た後、 映画を見て、ご馳走を食べて、ダンスをします。まるでデートみたいに。

“See you tomorrow.”と言ってキスをしてさようならをしますが、 目覚めるとHannahの隣にはぬいぐるみがいて、Hannahは微笑むのでした。

誕生日の朝、お父さんはHannahを動物園に誘います。

昨日のゴリラと同じコートを着て帽子をかぶった父親と、 ゴリラのぬいぐるみを連れて動物園に出かけるHannah はとっても幸せでした。

Gorillaはイギリスで出版された絵本のうち、 その年の最も優れたイラストのものに送られる、 ケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。

精密だけど遊び心のあるイラストで、壁に掛けてある絵画が全部ゴリラだったり、 風景にもゴリラが隠れていたり、あちこちに仕掛けがあって、眺めるのが楽しい絵本です。

Hannahは髪の毛や肌の質感が触れそうなくらいリアルに描かれていて、 その素敵な笑顔にこちらまで笑顔になります。

ゴリラの表情もとっても豊かで、ユーモラスで、愛らしい。

静かな家庭に起こったミラクルなお話。

父親の愛情がゴリラに乗り移ったのでしょうか。

Hannahはきっと素敵な女性に育つのだろうなあ。

お父さんたちにも読んで欲しい絵本です。
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
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