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DREAM SNOW by Eric Carle

DREAM SNOW
by Eric Carle
エリック・カールの絵本は、『はらぺこあおむし』があまりにも有名ですが、 個性的な仕掛け絵本が多いです。

表紙のおじさんは、サンタさんではなくて農夫。

とてもシンプルで実直な生活をしています。

One, Two, Three, Four and Fiveと名付けられた5匹の動物と、Treeという名前の木。

毎日動物の世話を丁寧にして、平穏に暮らしています。

クリスマスも近いある日、一日の仕事を終え、大好きな椅子に腰掛けて、 ペパーミント・ティーとハニー・ブレッドを楽しんだ農夫はうたた寝をして夢を見ます。

雪が降って、自分も動物たちも雪に覆われる夢。

絵本では、透明なプラスチックのページに雪と雪のブランケットが描かれていて、 それをめくると誰が覆われていたのかが分かる仕組み。

表紙も雪の水玉が描かれたプラスチックのカバーがされていて、 それだけでワクワク感があります。

目を覚ました農夫は、実際に雪が降り積もっているのに気づきます。

そして、大事な用事を思い出し、防寒具を着込んで出かけるのでした。

「I almost forgot! I almost forgot!」と言いながら、Treeを飾り付け、プレゼントを置き、 「Merry Christmas to all!」と叫びます。

最後のページにはボタンが付いていて、 それを押すとキラキラな不思議なメロディーが流れます。

特にドラマティックな出来事もないし、最後のサウンドも音楽ですらないのですが、 なぜか心に残ります。

素晴らしい色彩のイラストと、 自然を愛するエリック・カールの暖かい視線が感じられるからでしょうか。

はっきりしたストーリーが無いから、逆に気に掛かって、 何度も眺めたくなるのかもしれないですね。

農夫にはモデルが居て、絵本の裏表紙にエリック・カールと一緒の写真が載っているのですが、 二人は兄弟のようにそっくりに見えて微笑ましいです。

小説と違って、絵本を書くということは、文章を削って絞り込んでいく作業なのだと エリック・カールがどこかで書いていました。

子どもが成長して大人になるということは、とても大変なことであって、 彼はそれを少しでも手助けしたいという思いで絵本を書いているそうです。

言葉で全部書いてしまっているような説明的な絵本、説教っぽい絵本は苦手なのですが、 エリック・カールの絵本には大人が読んでも 心に響くような静かなパワーがあると思います。

子どもへの読み聞かせにもオススメな一冊です。
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谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
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