あなただけのちいさないえ(ベアトリス)
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![]() あなただけのちいさないえ
ベアトリス・シェンク・ド・レーニエ (著) アイリーン・ハース (イラスト) 皆さんは幼い頃、ちいさな居場所を持った経験はありますか?
子供部屋など、ちゃんとしたもののことではなくて、自分だけが知る、どこかとても狭いスペースに入り込んで、そこを自分の部屋のように見立てた経験です。 私はあります。一番よく覚えているのは、当時、リビングにあった3人掛けのソファの裏。 ソファの背後には、カーテンがかかった大きな窓があって、窓や雨戸を開閉するためのスペースとして、大人がぎりぎり通れるくらいの隙間がありました。 その隙間に、気に入ったおもちゃを持ち込んで、気に入ったように並べたりして過ごしました。 床までの大きな窓は南西に向いていて、カーテンを開けていると明るくて心地よかったな。 今回ご紹介する絵本は、そんな記憶を呼び覚まされた作品です。 この作品では、その居場所のことを「ちいさないえ」と呼び、誰しもその人だけの「ちいさないえ」を持ちましょうと、子供たちに呼びかけるところから始まります。 まず、書き手の経験が語られます。 彼女が幼い頃、気に入って「ここ!」と決めた、彼女だけのちいさないえ第1号は、丸いテーブルの下。 そのテーブルには、足元が隠れるくらいの大きなクロスがかかっていたそうです。 少しして大きくなると、テーブルの下では狭すぎて、木の上も彼女のちいさないえになりました。 読み進めると今度は、ちいさないえにうってつけのアイテムや場所、状況などの提案がいくつか続きます。 その中には、もしかしたら、皆さんの経験の中にある、あなただけの「ちいさないえ」が含まれているかもしれません。 私自身も、冒頭に述べたソファの裏以外に「そうそう!」というのがいくつかあって、無邪気な記憶がいくつも蘇る、楽しい読書体験となりました。 これだけでも充分、読む甲斐があるなあと思うわけなんですが、しかしこの絵本は、それだけでは終わりません。 その「いえ」を持つことをどうして勧めるのか?それは人にとって、どのような役割を果たすのか?易しい言葉で、そこまでふれられています。 ここでいう「いえ」とは、社会との関わりを維持する中で、時折過ごす、一人でいる時間のこと。 また、年齢や性別に関わらず、どんなに身近な間柄であっても、互いに個人を尊重し、必要なプライバシーを確保すること。闇雲に踏み込んではいけないし、踏み込まれてもいけないもの。 そういったことを、「ちいさないえ」になぞらえて、伝えようとしています。 すっかり大人になってみたものの、果たして、ちゃんとわきまえた行動ができているかなあ?ちょっぴり考えさせられます。 目の前の忙しさに気をとられてしまって、つい、そういった配慮に欠けてしまいそうになったなら、この絵本の内容を思い出すといいかもしれません。 そんなわけで、今回ご紹介した絵本もギフトにぴったりです。 ではでは皆様、2015年も残すところあと1ヶ月をきってしまいました。どうぞ楽しいクリスマスをお過ごしになって下さいね! ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |