A Monster Calls By Patrick Ness
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![]() A Monster Calls
Inspired by an Idea from Siobhan Dowd By Patrick Ness, Illustrated by Jim Kay 児童書なら辞書をひかなくても読み切ることができます。やさしい文章をたくさん読む事は、英語上達の近道でもあります。大人でも楽しめる児童書を紹介しています。
13歳の少年Conorは、7年前に両親が離婚し、父親は若い奥さんとアメリカで新しい家庭を持っている。 愛情深い母親は末期の癌で、治療のために髪の毛を失い、嘔吐を繰り返し、痛みに苦しみながら闘病を続けている。 学校では、皆がConorの母親の病気の事を知っていて、腫れ物に触るような扱いを受けたり、苛められたりで孤立。毎日のように悪夢にうなされ、自分の悲鳴で目をさましてしまうConor。 そんな中、真夜中すぎにMonsterがConorのところにやってきた。 庭の大きなyew tree - イチイの木が動きだし、恐ろしい姿かたちで迫ってきたが、悪夢に出てくるモンスターと違っていたので、Conorは恐怖を感じない。 Monsterは、自分はConorに呼ばれたと言う。 これから3つの物語を話すから、それが終わったらConorが4つめの話を、真実の話をしなければならない。 そうしなければ、I will eat you up 食べてしまうぞ、というのだった。 嫌々話を聞くConor。1つ目のお話は、よくある童話のように始まったが、拍子抜けするような結末になってしまう。そんなの物語じゃないと抗議するConor。 2つ目からのお話は、現実と入り交じって、周囲にまで影響を及ぼす。自分でも信じられないような破壊的な行動を取ってしまい、Conorはますます混乱する。 世の中の人は善人と悪人に分かれるのではない、ほとんどの人がそのどこか中間地点にいる。 1人の人の思いもまた、何百万もの思考から成り立っていて、100%の善や悪から成り立っている訳ではない。 大切なのは、どのように表現するか、行動するかであって、それが自分にとってのTruthなのだ。 そんな複雑なメッセージを伝える児童書を他に読んだことがなくて、とても心に残った。 大人でも、はっとさせられる内容だ。ラストのシーンは思い出しただけでも涙してしまう。 モンスターが色々な物語を見せるというスタイルが、どこかディケンズのクリスマスキャロルを思い出させた。 Audio Bookで聞いたので、1人のナレーターがモンスターやConor、お母さんの声音を使い分けて、演劇のようで素晴らしかった。 この本は、イラストでも賞を取っているので、紙の本も是非読んでみたい。 元のアイデアは、Siobhan Dowdという若くして乳癌で亡くなった作家のもので、最初の部分と構成だけから、Patrick Nessが書き上げたというユニークな作品。 Audio Bookには、彼のインタビューも収録されていた。 大人になると、子どもだったときの事を忘れてしまうというが、Nessは感じた事を鮮明に覚えているという。 そういう人が児童文学の作家になるのだなと納得した。 子どもにも、大人にも救いを与えてくれる感動作。 ![]()
谷津 いくこ
絵本専門士 絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。 StoryPlace HP:http://www.storyplace.jp Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/ |