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バックスター ルミ
バイリンガルライフコーチ RumiBaxter

丁寧に生きるという選択 ライフスタイル 2016-11-11
丁寧に生きる 「一期一会」

先日、30~60代までのアメリカ人女性達を招いてお茶会を開くという興味深い機会を持つことができました。私も含め、彼女達は、年齢はもちろん、職業も、日本との関わりも全く異なる人たちでした。何かのご縁で、同じ時に、同じ場所に引き寄せられ、集まることができたことはとても不思議です。

その日の話題は、世界が注目しているアメリカの政治の話から、ガーデニングの話、と多岐に及びましたが、自然に、私達はフェミニズムについての話で盛り上がっていました。

フェミニズム、というと堅苦しいイメージ、まるで拳を振り上げて権利を主張するイメージですが、フェミニズムとは「女性の生き方についての話」「人間としての生き方の話」なのだと再確認した日でもありました。

中でも印象に残ったのは、
「私は離婚もし、いろいろなことも経験してこの年齢に達したけど、一つ言えるのは、私は母親としては大成功したわ」と言った65歳の女性の言葉でした。

アメリカの先住民族であるネイティヴインディアンの血が混じっているという彼女は、茶目っ気たっぷりに、「私が母親としては成功している、と話し出すと、大概の人は、すぐに子供がどこの大学に行って、どのくらい年収の高い職業についたかを聞きたがるのよね。」と言いました。

「でも、私の3人の息子は誰も大学にはいかなかったわ。それでも3人ともスキルを身につけ、経済的に独立し、人生を楽しむことのできる職業をもち、そこそこ幸せに暮らしているの。それって母親としては大成功だと思わない!?」と話してくれました。

もう一人の30代の女性は、「私はあなたとは反対。子供を17才で産んで、シングルマザーのナースとして働いたわ。再婚して、必死に勉強してドクターの資格を取ったの。私の娘は、勉強と資格の大切さを、私を見て感じてきたはず。ファッションが大好きで、モデルのアルバイトをしながら、今彼女は、デザインジャーナリズムを大学で勉強しているの。」と話してくれました。

こんな風に、違う意見をオープンに言い合いながら、話が重なっていく場ではいろいろな考えが交差し、ワクワクします。

陶芸アートを世界各地の子供達に伝えている友人もいました。彼女は控えめに「私には子供がいないから、あなた達がどうやって育児と仕事の両立を乗り越えてきたかわからないけど」と言っていましたが、彼女こそ、素晴らしい教育者の一人です。

その日の参加者のそれぞれが、違う年代に、広いアメリカの違う場所で、女性として生き、母親として自分の信念を子供達に伝えながら生きてきた様子を聞きながら、そこに一つの正解はないと深く感じた日でもありました。

日本で、教育、コミニケーションに関わっている者の一人として、私はいつも正解も方法もひとつじゃないよ、と主張しているのですが、フォーマットやマニュアルを求めている人々の影をいろいろな形で目にします。

人生のライフステージの全てを「○○活」とした表現は単に言葉の問題だけではなく、人生のマニュアル、成功へのマニュアルを求めていることから生まれてた発想のような気がするのです。妊活から終活まで、いったい誰が決めたのか、マニュアル化しようとしていると思うと複雑な気がします。

もちろんカルチャーの違いもあるでしょうが、女性の生き方、いえ、人間の生き方には正解も間違いもありません。成功も失敗もありません。勝ちも負けもないのです。そこに、マニュアルなどできるははないのです。

お茶会に集まった女性達に共通していたのは、それぞれの生き方に信念があったということ。共通の信念とは、「自立」することへの努力と、それをどうやって子供達に伝えてきたのかというような気がします。

自立とは、経済的に、そして、精神的に自立する努力のことです。自立したメンバーの集団の中では、他人への尊敬が生まれます。他人と考えの違うことに尊敬が生まれます。他人を尊敬できる集団の中では相手を思いやる気持ちが生まれるような気がします。それは平等への第一歩です。

「30年かけて築き上げた今のフェミニズムを決して後戻りさせられない、」と言った言葉も聞きました。とても印象的に耳に響きました。フェミニズムは自然に与えられるものではないということでしょうか。フェミニズム、人権、自立といったキーワードに意識的になることはとても大切なスタートです。

お茶会から何日間後、参加者のある方は大統領選挙にとアメリカへ帰って行きました。彼女はとても心のこもったメールを書いてくれたのですが、その中に、「人生のある一点でクロスし、交わり、一緒に話をするという時間はとても貴重でした。又何かのご縁でいつかどこかで会えることを祈っています」と書かれてありました。もしかしたらもう2度と会うことはないかもしれない彼女達との時間は、私にとっても、大変貴重で、一期一会、をしみじみと思い出した日でもありました。


 

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