関西で働く女性のライフスタイルマガジン［関西ウーマン］

矯正歯科医という仕事を長くやっていると、矯正治療によって変化するのは患者さんの歯並びだけではないということによく気づかされます。

ある患者さんの話。

その患者さんはいわゆる受け口を気にして来院されました。

見た目の改善のためにはもちろん、歯を一生長持ちさせるためにも矯正治療が必要であることを詳しく説明しましたが、治療を開始するまでに本当に迷って迷って、矯正相談に来院されること数回、その他もメールで何度も気になることを問い合わせて来られるほど、なかなか不安がぬぐえないようでした。

治療が始まって装置が付く段階になっても、また装置が付いて治療が始まっても、いつも心配そうな顔をして「装置が目立つのが嫌だ」「歯が痛くて食事ができない」「装置があたって痛い」としょっちゅうネガティブなコメントをしていました。

ところが、治療が進んで歯がきれいに並んでくると彼女に変化が表れたのです。

まず笑顔が多く見られるようになりました。

そして私たちの問いかけに対しても不平や心配事ではなく、楽しい会話をしてくれるようになりました。

さらに治療途中で彼氏もできたそうで、ますます笑顔も増え、前向きな言葉も聞かれるようになりました。

装置が外れる頃には結婚も決まり、今では笑顔が印象的な素敵な女性になりました。

また別の患者さんは、矯正治療をするまでは歯を見せて笑うことが嫌だったけれど、思いっきり笑えるようになったと、先日の成人式での晴れ着姿の写真をうれしそうに見せてくれました。

晴れ着姿の彼女を見て、おばあちゃんは涙ぐんでいたそうです。

その光景を思い浮かべると、なんとも温かい気持ちになれ、いい仕事ができたなあと私までうれしくなりました。

歯の矯正治療は単なる歯並びだけを治す治療ではないのかもしれません。

歯並びがきれいになって口元や顔つきが変わることは、もしかしたら気持ちも思考も生き方すらも変えてくれるのかもしれませんね。