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池田 千波留 パーソナリティ、ライター 香のん
(←プロフィールは写真をクリック)宝塚歌劇の魅力にぐいぐい迫っていきます!
タカラジェンヌ歳時記 趣味・カルチャー 2015-06-19
”シャンシャン”持ってにこやかに。タカラヅカ風パレードを体験!
宝塚歌劇の公演を締めくくるフィナーレ。
最後に出演者全員が、主題歌メドレーに乗って、
学年とスター序列を加味した順番に大階段を降り、お客様にご挨拶、
整然と行進するパレードは夢の舞台を締めくくるにふさわしい華やかさです。

ごく稀にフィナーレなしで成立する演目もあるものの、
豪華なフィナーレは宝塚歌劇のシンボルの一つ、
宝塚歌劇ファンの憧れといっても良いでしょう。
 
このパレードで、生徒が持っている飾り道具をシャンシャンと言います。
パレードにシャンシャンを持つのが定着したのは1950年『アラビアン・ナイト』から。
この時の飾り物には鈴が付いていて、シャンシャンと楽しげな音を立てたのが
評判となったそうです。

以後、パレードで持つ飾り道具を「シャンシャン」と呼ぶようになったのです。
シャンシャンのデザインは、公演ごとに違います。
『ベルサイユのばら』であれば、ばらの花束のようなデザイン、というように
内容やタイトルに合わせたものが作られるのです。
(時にはシャンシャンではなく、ステッキや羽扇などを持つこともあります)

シャンシャン本体にはリボンがついています。長さは2.2m。左右の手で本体と
リボンを持った時、一番バランス良く美しく見える長さに設定されています。
 宝塚ファンであれば一度は、シャンシャンを持ってパレードしてみたいと
思うのではないでしょうか。

6月1日、元タカラジェンヌ指導による講座「体験!タカラヅカ風パレード」が
開催されると知り、私も体験してきました。
体験談の前に、講師を務められた元宝塚歌劇団 綺華れいさんのお話をご紹介します。
 
綺華れい(あやか れい)さんは1998年初舞台・84期生、星組で活躍された男役さんです。
この夏トップお披露目の星組・北翔海莉さんは同期のお一人です。
                        (写真ご提供:綺華れい様)
■ シャンシャンの形状・大きさ・重さなど
ちゃんと測ったことはありませんし、公演によっても違うのですが、
だいたい直径は30センチくらいだと思います。

形は円形のパネルのようなもの、
ベルサイユのばらのようにブーケのようなものが多いです。
パネル型の場合は裏にお鍋のふたのような取手がついていることが多いのでそれを持ち、
ブーケ型の場合は軸の部分を握ります。さほど重たいものではありません。
 
通常、舞台内側に本体が、外側にリボンがくるように持ちますが、
舞台が左右対称に見えるよう、上手側(客席から見て右側)の人は逆に持っています。
ただし、三方礼(*注1)の時には、全員の動きが同じになるよう、
上手側の人は本体とテープを持ち替えているんですよ。 

(注1)三方礼:上手側、下手側、センターと客席の三方向に向かってお辞儀をすること。
 
■ 初めてシャンシャンを持ったときの感想
宝塚音楽学校ではシャンシャンを持つお稽古はありませんでした。
ですからシャンシャンを実際に持ったのは宝塚歌劇団に入団した後です。

シャンシャンはトップスターさんから最下級生まで全員がお揃いでしょう?
これが嬉しいんです。
特に初舞台生は、同じ舞台に出させていただくものの、
通常は組の皆さんとご一緒する場面はありません。

口上にしてもラインダンスにしても別室でお稽古をしますから、
その組の「お客様」ではないですが、
なんとなく自分たちだけ浮いているような気がしていました。

でも舞台稽古で、トップさんから初舞台生に至るまで
全員が同じシャンシャンを持ってパレードをした時
「ああ、私たちも舞台の一員なんだ!」と感激したことを覚えています。
(綺華さんの初舞台 宙組『シトラスの風』はシャンシャンではなく羽扇でしたが、
便宜上シャンシャンと表記しました)
 
■ 公演中のシャンシャンについて
稽古場では手作りのシャンシャンを持ちます。
新聞紙を丸めたものにビニールテープなどを巻きつけて作るのは研一さん(*2)のお仕事です。

この講座のためにシャンシャンを手作りした時に、研一の頃を思い出しました。
筒型に丸めた新聞紙の端からビニールテープをらせん状に巻きつけていくのですけど、
見た目が美しいようにと、神経質なまでに等間隔にしていたんです。

今思えば、同期8~10人くらいで出演者全員の分を作るんですから、
もう少しラフに作っても良かったのに、必死だったんですね。
手を抜くことを知らないというか。(笑)

今公演で使用されるシャンシャンの実物を目にする時期は公演ごとに違いました。
早い時は、舞台稽古の3、4日前に見本として数個がお稽古場に届きます。
そうでない時は、舞台稽古の時に初めて実物を見て、手に取ることになります。
 
シャンシャンは舞台袖の「シャンシャン掛け」に取りやすい状態で並べられています。
一人一人自分のシャンシャンがあり、裏に名前が書かれているんですよ。
各自シャンシャン掛けから自分のを取って、リボンの状態や、
電飾がある場合などはスイッチをつけて点灯するかなどチェックをします。
トップさんは衣装替えなどお忙しいので、別の方がシャンシャンを取りに来られていました。

(注2)研一:研究科一年生の略。宝塚歌劇団に入団した年から学年がカウントされていきます。
今年101年目の宝塚歌劇団。初代タカラジェンヌは研百一ということになります。

 
■ エピソード
私たちは公演中「役」として舞台に立っているので、
お客様に感謝の気持ちをお伝えする機会はフィナーレしかありません。

「今日はお越し下さって本当にありがとうございます」
という気持ちをお伝えする唯一の時間だと、
生徒は皆、フィナーレのパレードを大切に思っています。

にこやかに大階段を降り、舞台前方に進んで、お辞儀をして所定位置に移動する、
という一連の動作は、何気ないように見えて、
どの瞬間も美しく見えるように動くにはいろいろなポイントがあります。

私はそれをこの講座でお伝えしているのですが、
在団中「こう動けば綺麗、腕の位置はこう」と誰かに教えていただいたことはありません。
おそらく劇団では、振り付け以外の細かい部分の具体的な指導は行っていないのだと思います。

私は、上級生のかたが大階段を降りてこられる姿、歩かれる姿、お辞儀される姿、
それを毎日毎日同じ舞台で拝見しながら
「どこがどう違うんだろう?どうしたらあんなにカッコよく(きれいに)動けるんだろう?」
と思っていました。

そして少しずつ、自分なりの「型」を身につけていったように思います。
それはきっと皆さん同じではないでしょうか。
言葉で教えていただいたら早いように思われるかも知れませんが、そうではないと思うのです。

去年、上級生のかたたちとお仕事をさせていただく機会がありました。
その際、カウントがギリギリの場面があったのです。

もともとのタイミングがギリギリなのに、
ある時何かの間違いでイントロがいっそう短かくて「あ!全然間に合わない!」と思いました。
その時、どなたも言葉を発しなかったにもかかわらず、先頭のかたから最後のかたまで
同じように動いて無事カウント内に舞台に揃うことができ、本当に感激しました。

相談する余裕もなかったし、どなたかが指揮をとられたわけでもないのに、
トラブルが発生した瞬間全員が同じように感じ、同じ行動ができた…
舞台が終わった後、組の違い学年の違いを越えて、全員で喜び合いました。

舞台は生きていて、瞬間ごとに違う、
それを肌で感じて行動できたのは、宝塚歌劇の伝統の力だと思います。
在団時期が違っていても、根底に流れるものは変わらない。

そしてもし、何もかも「教えていただく」「習う」姿勢だったら、
こんなことは出来なかったのではないかと思います。
宝塚歌劇団のすばらしさを知ったアクシデントでした。

アクシデントといえば、出番の前に何度もチェックしたにもかかわらず、
舞台に出たらなぜかシャンシャンについている電飾が点かないことが稀にありました。
これも「謝り」の対象で、
私も何回か「申し訳ありませんでした」と楽屋を回ったことがあります。

自分のミスではなく物理的なアクシデントなのに謝るのは不本意に感じられますか?
確かに自分のミスではないかもしれませんが、
一人だけ電球がついていなかったら目立ちますよね?
舞台の流れや外観を損ねたことは事実で、
そのことで謝るのを理不尽だと思ったことはありません。
すべてはお客様に楽しんでいただくため。舞台ってそういう場所だと思います。
 
続いては、綺華さんご指導の「体験!宝塚風パレード」のレポートをお届けします。
会場は、朝日カルチャーセンター 芦屋教室。
フローリングの部屋で行われました。

参加者はそれぞれバレエシューズやエクササイズ用のシューズを持参。
中には社交ダンス用のヒールで参加される本格派もいらっしゃいました。
 
いきなりパレード体験をするのではなく、まずは姿勢から。
頭から足までしっかりと伸ばし、まっすぐに立つ練習です。

続いて、その姿勢をキープしながら歩く練習をしました。
「足を出す、というのではなくて、脚の付け根・骨盤から押し出すような気持ちで」
同時にお尻を締め、腿の内側に力を入れることも教わりました。
 
歩き方が安定してきたところで、いよいよシャンシャンを持って歩く練習です。

下半身は先ほどと同じ要領で、今度は上半身に意識を向けます。
脇の下に余裕を持たせ、若干肘を張る感じで、両手を広げます。
肩甲骨を寄せ、胸を張りますが、その際肩を上げてはいけません。

胸と、シャンシャンを持って広げた腕でできる空間を綺麗に広くとり
キープすることを意識します。
これだけで、すでに汗ばんでくるのですから、
普段いかにダラけた姿勢で歩いているのか思い知らされました。

歩き方がわかったところで、男役・娘役それぞれのお辞儀を練習し、
いよいよ実際の音楽にのってパレードの振り付けをしていただきました。

本来であれば、上手下手によってシャンシャンを持つ手が違いますが
1時間半のレッスン時間では混乱するとの判断から、
受講者全員、右手にシャンシャン本体を、左手にリボンを持つことになりました。
 
パレードの流れを大雑把に言うと、
1.自分の出番が来たら音楽に合わせ手でリズムを取りながら大階段を降りる
2.舞台正面まで行き、お客様に一礼する
3.上手下手に分かれ、自分のポジションで、その場で踊りながら待つ
4.トップスターを迎える
5.トップスターを先頭に、銀橋へ出てご挨拶
6.再び本舞台に帰る
7.緞帳が下り、お客様に手を振りながらお別れする
となります。
 
大事なことは、どのような体勢になったときも、胸と腕でできる空間を広くし、
美しいポジションを崩さなことと
シャンシャンの正面をお客様に向け続けること。

「リボンを持っている方の手も大事なんですよ。
ぎゅっと掴むのではなく、綺麗に見せてくださいね」
綺華さんが上級生を見ることで学んだ「美しく見せるポイント」を
惜しみなく教えてくださるのでした。
 
また「客席を感じて。空間を感じながら踊ってくださいね」という綺華さんの言葉に、
なりきりやすい私は大劇場の眩いライトが見える気がして、
いっそう気分が盛り上がりました。
 
限られた時間ではありましたが、いい感じに仕上がり、
1時間半の授業が終わったときには
「楽しかった~!!」という声があがりました。
受講後の笑顔をご覧いただければお分かりかと思います。(写真3)
 
私も体験させていただいて、あまりにも楽しく病みつきになりそうでした。
これまで単に「綺麗だなぁ」と思っていただけのフィナーレのパレードへの視点も変わりそうです。
 
綺華さんは今後も「宝塚風パレード」講座を続けられる予定だそう。
参加されたい方は、ぜひ綺華さんのブログをチェックなさってください。

【取材ご協力】
元宝塚歌劇団 綺華れい様
株式会社朝日カルチャーセンター 大阪本部   芦屋教室様
「体験!宝塚風パレード」受講生の皆様

【参考資料】
宝塚歌劇検定 公式基礎ガイド

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