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池田 千波留 パーソナリティ、ライター 香のん
(←プロフィールは写真をクリック)宝塚歌劇の魅力にぐいぐい迫っていきます!
タカラジェンヌ歳時記 趣味・カルチャー 2014-12-19
常に新陳代謝を! 若手育成こそ宝塚歌劇100年の秘訣
金剛石も磨かずば 玉の光はそわざらむ
人も学びてのちにこそ 真の徳はあらわるれ

この言葉から始まる歌のタイトルは「金剛石」。
和歌に秀でておられた明治天皇の后・昭憲皇太后が
1887年(明治20年)に女子学習院に賜ったものです。

「ダイヤモンドも磨かなければ光らない、
人も学んでこそ真の徳が備わる」という
あらゆる分野に通じる深い意味からか
小学唱歌として親しまれた時期もあったようです。

現代もこの歌を歌い継いでいるのが、
学習院女子中等科・高等科、そして宝塚音楽学校なのです。
宝塚音楽学校では、毎年入学式に
「金剛石」と、同じく昭憲皇太后の詞による「水は器」を歌い
これから精進し、舞台人としても人間としても成長する決意を表明するのです。


歴史に名を残すスターが退団しても、
絶えることなくスターが誕生する宝塚歌劇団。
宝塚歌劇団が織りなす100年の歳月は
絶えず新たな原石を磨き、美しい宝石を作り続けた歴史と言えるでしょう。

金剛石を磨くのは、宝塚歌劇団に入団した一人一人であり、
また、演出家を始めとする宝塚歌劇団のスタッフです。
が、もう1つ、観客の目という砥石が
最後の輝きを与えるといっても間違いではありません。

それを象徴する言葉が「百の稽古より一度の舞台」。
稽古を積み重ねるよりも、一度本番の舞台に立つほうが
多くのことを学べる、という意味で、
宝塚歌劇団に限らず、さまざまな舞台芸術や茶道、武道などで
昔から言われていることです。

もちろん稽古を軽んじて、舞台にだけ立てば良いということではありません。
精進した成果を生かす舞台があってこそ飛躍的に伸びるということでしょう。

とは言え宝塚歌劇団は、スターシステムをとっており、
通常の公演はすべて、トップスターと娘役トップを主人公とし、
二番手、三番手…と、順番に役が振り当てられることになります。
たまに、抜擢はあるものの、下級生がいきなり目立つ役を演じることは
まずありません。
つまり観客の目がなかなか若手に届かないこともあるのです。

そんな中で新人を育てるために考えだされたのが
本公演の芝居(まれにショー)の配役をすべて
研究科7年生(入団7年目)までの下級生に割り振って上演する「新人公演」です。
宝塚歌劇団特有の制度かも知れない新人公演は1958年に初めて催されました。
1公演につき配役を変えて2度行われていたこともありますが
現在では、宝塚大劇場および東京宝塚劇場の各組公演ごとに1回ずつ行われています。
新人公演の上演は、本公演が終わったあとに行われるため
上演時間に限りがあり、若干の場面カットなどはあるものの
舞台のセットや場面展開、衣装など、ほぼ全て本公演と同じものを使用します。

新人公演で初めて主役を演じた生徒がよく くちにする言葉は
「トップさんのライトがこんなに眩しいとは思わなかった」
まさに目がくらんで客席が全く見えないくらい明るく眩しいライトだそうで、
これは稽古場では絶対にできない経験でしょう。
主役でなくとも新人公演で初めてソロを歌ったりセリフをしゃべったり、と
貴重な経験をし、飛躍的に伸びる生徒が大勢います。
その代表が天海祐希。
初舞台を踏んだばかりの年に
ミュージカル「Me & My Girl」の主役ビルで成功を収め
一夜にして名を馳せました。
私は残念にもその場に居合わせることは出来ませんでしたが
客席ではビル役の天海祐希が登場するなり
「あの子、誰?!」「可愛い!」と大興奮だったそうです。
つまり新人公演は観客にとっては新たなスター発掘のチャンスで、
なかなかチケットは手に入りません。
1度限りのチャンスを生かしたいと緊張する出演者と
プラチナチケットを手に入れ、新たなスターを見たいと願う観客で
新人公演は毎回、熱い雰囲気に満ちています。
もちろん、新人公演はいきなり本番があるわけではなく、
毎日の通常公演終了後、夜遅くまで続く稽古の上に成り立っているのです。


もう1つ、宝塚歌劇団が若手を育てるために役立っているのが
宝塚大劇場に併設されている宝塚バウホールです。
若手生徒の活躍の場を作ろうと1978年(昭和53年)に誕生した
宝塚バウホールは収容観客数が約500席。
(宝塚大劇場の総座席数は2550席)
どの席からも舞台が近く感じられ、出演者に親しみが持てる小劇場です。
こけら落とし公演は安奈淳主演の「ホフマン物語」でした。
以後、若手を中心とした芝居、ショー、ワークショプ、トップスターのコンサートなど
多様な作品が生み出されました。
バウホールは出演者の育成の場であると同時に、
若手の演出家たちの研鑽の場にもなったのです。

宝塚歌劇100周年最後のバウホール公演は12月14日に千秋楽を迎えた
星組「アルカサルー王城ー」でした。
漫画家 青池保子の作品を原作とした「アルカサルー王城ー」は
14世紀のスペインを舞台にした歴史物で、
実在のカスティリア王ドン・ペドロとその庶兄エンリケの抗争を軸にしたストーリー展開。
ドン・ペドロを演じるのは2006年初舞台の麻央侑希、
エンリケを演じるのは2005年初舞台の十碧れいや。
1学年違いの二人がW主演という形で競い合うこととなりました。
どちらも身長175センチの長身。
ビジュアルも美しい二人が王座をめぐり争う姿は、華やかで美しく、
今後の成長が楽しみです。
また、この公演では最下級生である研究科2年生にまで
多くのセリフやコーラス、ダンスが割り振られ、
宝塚バウホールが若手育成の場であることを示していました。

一人また一人と金剛石を磨き続けて
宝塚歌劇団はこれからも110周年、120周年と歴史を重ねてくれることでしょう。


宝塚歌劇団100周年もあとわずかとなりました。
今年はさまざまなイベントがあり、現役生OG生も大活躍。
楽しゅうございました。

1月から連載させていただいた私のコラム
「宝塚歌劇100周年 変わりゆくもの変わらぬもの」を
毎月 読んでくださってありがとうございます。

ワタクシ、今年で宝塚ファン歴39年になります。
メモリアルイヤー100周年が終わっても
私の宝塚愛が冷めることなどございません!

ということで、来年もコラムを続けさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

どなたさまもどうぞ良いお年をお迎えください。


【参考資料】
金剛石のうたについて
宝塚音楽学校ホームページ

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