考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール(益田ミリ)
一人旅だからこそできる深い考察 考えごとしたい旅
フィンランドとシナモンロール 益田 ミリ(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回は、益田ミリさんの『考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール』をご紹介しました。 フィンランドといえばマリメッコとムーミン。 それしか思い浮かべられない私にとって、フィンランドはとても遠い国です。 好きとか嫌いではなく、一生行くことがないような気もします。 ところがイラストレーター益田ミリさんにとっては、フィンランドはとても近い国のようなのです。 何せ、ぼんやりと疲れてしまったとき、目を閉じてこんなことを空想しているんですって。 今、わたしはヘルシンキの街にいる。
ホテルのロビーを抜け、扉を開いて表に出る。 水色の空、いい天気だ。 トラムが走っていくのを横目に石畳の道を歩き始める。 歩くのが早いフィンランドの人々。 わたしもちょっと早歩き。 アカデミア書店に入り、エスカレーターで2階のカフェへ。 席に着きコーヒーとプッラを注文する。 ほっと一息。 (益田ミリさん『考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール』 おわりに より引用) なんと具体的な空想でしょうか。
それもそのはず。益田さんはフィンランドに三度、四度と行っていらっしゃるのです。 初めてのフィンランド旅行は女友達と、二度目は仕事で、そして三度目は一人旅。2017年6月から7月のことです。そして翌年の2018年8月にまたお一人で四度目のフィンランド一人旅を楽しまれました。 この本は2017年と2018年のフィンランド一人旅についてのエッセイ集です。 タイトルにあるように、フィンランドのシナモンロールはとてもおいしいそうですよ。 いえ、おいしいのはシナモンロールだけではないようです。益田さんがおっしゃるには、フィンランドは乳製品がものすごくおいしいんですって。 他にもフルーツタルトやベジバーガーなど、益田さんはどれもこれもおいしいとおっしゃっています。私が特に気になったのはスープ。サーモンスープやとろとろネギのスープなど、味わってみたいと思いました。 でも、フィンランドの人にとって一番のご馳走は太陽なんですって。 夏場は白夜のフィンランド。夜8時でもカンカン照りの中、公園でピクニックしたり、芝生に座ってのんびりしたり。とにかくお日様を楽しむフィンランドの人々の様子から、益田さんはフィンランドの冬がいかに長く暗いものかを推測するのでした。 益田さんはフィンランドでただ食べ歩きをされていたわけではありません。 交通機関のことや、動物園、美術館、いろいろな場所の感想はとても興味深いです。 そして「考えごとしたい旅」というタイトル通り、益田さんはフィンランド旅行中にいろいろなことを考えます。 それはフィンランドと直接関係があることではありません。 だけど、人間って全く別の場所に居るからこそ深く考えることができるのかもしれません。 白夜の空を見上げながら益田さんが考えたことは、日本にいる私にも沁み入りました。 わたしたちは、いずれ死ぬ。100パーセントだ。すべての死因は生まれてきたことだ、と書かれていたのは哲学者の池田晶子さんではなかったか。
わたしを知る人間も必ず死ぬ。なにも残りはしない。 そう思っていた頃もあったけれど、今は、少し違う。出会った人たちの中にもわたしのかけらは残り、わずかでもこの世界に反応しつづけ、原型を留めずとも消えずに伝わっていく。そんなふうに感じる。わたし自身もそういうものだと思う。読んだ本、観た映画、芝居、詩、絵画、たくさんの会話。ぼんやりと影響をうけ、混ざり合い、わたしという人間になっている。わたしは、わたしだけではできあがっていない。かけらは、さらに砕かれ小さくなりつつ、しかし、残りつづけるのではないか。 (益田ミリさん『考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール』 P50-51より引用) 一人旅だからこそ、こんな深い考察ができるのかもしれません。
私は日帰りや一泊くらいなら一人旅をしたことがありますが、長期間一人で旅行したことはありません。一度試してみたい気がします。 考えごとしたい旅
フィンランドとシナモンロール 益田 ミリ(著) 幻冬舎 温かいコーヒーとシナモンロールを頬張りながら。時間とか、人生とか、自分について、「食べて」「歩いて」「考える」フィンランドひとり旅。 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
|
OtherBook