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Mooncop by Tom Gauld

孤独な中にかすかな希望も

Moon Cop
by Tom Gauld
みなさんは、宇宙に行ってみたいと思いますか?これは、巨額の費用をかけて、数分の宇宙の旅を楽しむのとは、まったく別の世界の、静かな静かな月のお話です。

主人公は、Mooncop - 月のコロニーの平和を守る警察官です。子どもの頃の夢が叶って、警官になって月で暮らしていますが、コロニーは寂れていて、事件といっても、迷子の犬や人を探す程度。単調な日々を過ごしています。

日課は、ドーナツとコーヒーを自動販売機で買って、お気に入りの場所で車を止め、地球を眺めながら食べること。

ささやかな平和も続かず、住民はどんどん去って行きます。スーパーの店員は、ロボットに置き変わり、Museum of Moon は閉館に。主人公は、アパートの最上階で暮らしていましたが、空室のユニットが取り払われて高さが半分になってしまい、窓から地球も見えなくなってしまいました。せつない……

そんな中、何かの手違いでドーナツの自動販売機が実店舗にグレードアップされ、女性の店員がやってきます。コンピューターにデータの統計を任せていると、こういうこと、起こりそうですね!

ずっと未来の設定ですが、ちょっとレトロなSF映画のような雰囲気です。荒涼とした岩だらけの地面の上に、ブロックのような建物がぽつりぽつり並んでいて、木々は透明なカプセルの中で育てられています。実際に他の星にコロニーを作るとしたら、こんな風になるんじゃないでしょうか。

主人公が操作するコンピューターも黒の画面に文字だけが並ぶ旧式のもの。これは、絵本ではなく、グラフィックノベルで、漫画のようにコマ割りです。コンピューターの画面がそのまま1コマになっていて、やりとりが表現されています。融通のきかない機械やロボットが、ユーモラスで笑えます。

表紙は深いブルーの空に、シルバーで月の表面が描かれ、一人端末を持って歩くMooncopの孤独が伝わってきます。中身はモノクロで、光のない世界。イラストは日本人にも親しみやすく、表情や雰囲気も分りやすい。英語のマンガは、文字が大文字で読みづらいイメージがありますが、この本は言葉が少なく、違和感なくすんなり読めます。

Tom Gauld は、ガーディアンやニューヨーカーで活躍する世界的に人気のマンガ家です。日本語版は、『月の番人』として昨年出版されました。

静寂で孤独な中、ユーモアや、かすかな希望も感じさせる、詩的な作品です。
Moon Cop
by Tom Gauld
Publisher: Drawn & Guarterly
profile
谷津 いくこ
絵本専門士

絵本を原書で読んでみませんか?アートな絵本、心が豊かになる絵本、英語圏の文化に触れられる絵本などを紹介します。
StoryPlace
HP:http://www.storyplace.jp
Facebook:https://www.facebook.com/storyplacejp/

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