あかいえのぐ(エドワード・アーディゾーニ)
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![]() 情熱が報われるための条件とは あかいえのぐ
エドワード・アーディゾーニ お店を始める前は印刷物を作る仕事をしていたので、時折今も、お店の奥でデザインの仕事をしています。
パソコンで作業するんですが、20年余り前、そもそもの志望動機は仕事への興味ではなくて。お絵描きが好きなので、パソコンで絵が描けるようになれたらいいなあ!と思ったのがきっかけでした。 今回ご紹介する絵本は絵描きにちなんだ作品です。50年以上前の作品のようですが、帯には日本初訳作品とあります。 作者のアーディゾーニは、私と同世代から上の方にとっては、馴染みのある絵本作家かもしれません。 サラサラと引かれたペン画のような線は、スケッチしたみたいに生き生きとしています。描かれた光景が実在するかのような、不思議な温度を感じるところが素敵です(私が子供の頃お気に入りだったタイトルは、残念ながら現在は古書でしか流通しておらず)。 この作品でも同様の温度をにじませながら、絵描きを続けるパパの情熱を信じて、助け合って暮らす貧しい一家の様子が描かれます。 一家の暮らしがいよいよ苦しくなる中、パパは渾身の傑作を仕上げようと取り組んでいました。 両親の役に立ちたい。子供たち(姉とすぐ下の弟)は、ちょっとでも足しになればと色々やってみますがうまくいきません。 健気な二人の様子を見守っている人物の一人が、近くの古書店主です。彼は、店にやってくる二人に日頃から居場所を提供しており、ひそかに一家の様子も案じていたようです。 やがてその古書店を舞台にしながら、物語はハッピーエンドを迎えるのですが、その顛末は実際に読んでお楽しみ頂きたいなあと思います。 渾身の傑作は、パパの情熱そのもの。完成させるには、あと少し赤い絵の具を足せばいいだけ…のはずなのに、それが用意できない。 けれど、もしそこで不自由なく絵の具が足りていたならば、最後のハッピーエンドが訪れることはなかったかもしれません。 情熱が報われるための条件とは。足りなかった赤い絵の具が、私たちに教えてくれます。 さて、何だかんだでデザインの仕事を始めて20年余りたった今、これまでろくにパソコンでお絵描きなんかしてないやろーっていう(やる気あんのか?私)。 デジタルだと「絵の具が足りない」といった事態は招かないわけですが、目下のところ、ペンとタブレットが足りてないや(絵の具どころじゃなかった)。 毎年グイグイやってくるのは「食欲の秋」ばかり(笑)私の中の「芸術の秋」は、未だはにかんだまま、今年も秋が終わろうとしています。 あかいえのぐ
エドワード・アーディゾーニ(著) 津森優子(訳) 瑞雲舎 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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