おおきいツリー ちいさいツリー(ロバート・バリー)
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![]() ツリーを囲むユーモラスなキャラクターたち おおきいツリー ちいさいツリー
ロバート・バリー(作) 今年もクリスマスシーズンがやってきました。
クリスマスの絵本といえば、ツリーを題材にしたものも色々あります。今回ご紹介する作品も、そのうちの一つです。 大きなお屋敷に、見たこともないような大きなツリーが届けられます。大広間に飾ってみると、ツリーの一番てっぺんが天井につかえて曲がってしまうほどでした。 主人に呼ばれた執事は、大きな梯子に登り、ツリーの曲がった先っぽを斧で切り落とします。お屋敷の主人は問題が解決して一安心。 さて、先っぽとはいえ充分なサイズです。執事は、それを召使いの女性におくりました。女性は丸いサイドテーブルの上へ飾りましたが、また先っぽがつかえてしまいます。 今度はハサミで切って、他のゴミと一緒にお屋敷の外へ。 そのゴミに紛れた小さなツリーを庭師が見つけて持ち帰り、庭師の奥さんが先っぽを切って窓から外へ捨て、次にそれを熊が見つけて…と、この繰り返し。 捨てられる先っぽがどんどん小さくなるにつれ、拾う動物も小さくなっていきます。 行く先々で何度も、ちょっとだけ頭がつかえてしまうツリー。繰り返しその様子を見せられると、「惜しい!」とツッコミたくなる感情がわいてきます。 すると、ツリーには目鼻がないにも関わらず、いかにも申し訳ないような、困っているような仕草をしているようにも見えてくるのが、ちょっと楽しい。 きっと、ツリーを囲むキャラクターたちが、みなユーモラスに描かれているからかもしれません。ちまちましていて愛嬌いっぱいです。 しかし、大人の視点で読んでいて、すごいなと思ったのは、庭師の奥さんの場面です。 夫からツリーを受け取ると、おおいに喜んで、 「でも、うちは こぢんまりしていて 小さいんだから、もうちょっと、小さくてもいいように思うわ」といって、彼女だけは、飾ってみる前から、あっさり先っぽを切って捨てたのでした。 身の丈をわきまえた、何という潔さ。 そのすごさに気づける子供はいないはず(てか、それはいてほしくない)と、作家も承知してたろうと思うわけですが、あえて自身のエスプリを忍ばせているところに、こだわりを感じます。 先月ご紹介した作品と同様にロングセラーですので、子供の頃、あるいは子育て中に親しまれたりと、懐かしく思われる方が幅広い世代におられるかもしれません。 現在流通しているものは2000年にカラーで改めて発行されたものとなっています。 今年も残すところ1ヶ月足らずとなりましたね。 皆様、どうぞ素敵な年末年始をお過ごし下さい。 来年もどうぞよろしくお願い致します。 おおきいツリー ちいさいツリー
ロバート・バリー(作) 光吉 夏弥(訳) 大日本図書 ![]() 恒松 明美
ギャラリーリール(GALLERY RiRE)店主 小説なら1日。映画なら2時間。絵本なら、長くても15分くらいでしょうか。 それでも小説や映画に負けないくらい、心が満たされる絵本があります。 毎日、時間がたりない…。そんな、忙しく働く女性にこそ、 絵本はよきパートナーとなってくれると思います。 毎日窮屈だな。ちょっと背伸びしてばかりだったかな。 「心の凝り」が気になる時におすすめの、絵本をご紹介します。 ギャラリーリール(GALLERY RiRE) |
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